誤った人材を雇用することによる見えざるコスト
適切な人材を採用することは、どの企業にとっても重要な課題です。一人の人材でビジネスを変えることはできませんが、適切な人材は全体的な成功と成長に大きく貢献します。組織の長期的な目標を達成するためには、すべてのチームメンバーが重要な役割を果たさなければなりません。しかし、採用の判断を誤ると、特に国境を越えた場面では、大きな代償を払うことになりかねません。
適切な人材を採用するにも、多額の初期費用がかかります。Society for Human Resource Managementによると、米国における平均採用単価は2019年の4,129ドルから2024年には4,700ドルに上昇しています。これはわずか数年で14%増加したことになります。
採用コストだけでなく、入社手続き、トレーニング、チームの士気や生産性の乱れがさらなる出費につながる可能性があります。
良い採用はリターンの大きい投資ですが、不適切な採用はリソースを消耗させます。解雇が正しく管理されていない場合は、特にそうだといえます。負債が瞬く間に拡大し、社内の人事チームを疲弊させ、士気を低下させ、会社の評判を落とすことになりかねません。
国境を越えて人材を雇用する国際企業にとって、リスクはさらに大きくなります。労働法、文化的なニーズ、規制環境が異なるからです。
このブログでは、日本を主な例として、誤った人材を採用することで生じる見えざるコストを明らかにしていきます。また、厳しい雇用規制を持つ他の国々との類似性も紹介していきます。
誤った雇用がもたらす高いコスト
間違った人材を採用した場合の経済的な影響は、給与や福利厚生といった明らかなコストにとどまりません。以下は、企業が直面する可能性のあるコストの一部です。
- 退職金と報酬コスト: 多くの国では、解雇時の退職金や予想される報酬は多額になる可能性があります。日本では退職金は法的に義務付けられていませんが、支払われることが一般的です。法定の上限がないため、これらの支払いは個人の状況によって大きく異なる可能性があり、最終的な金額は想定よりはるかに高くなる可能性があります。このような予測不可能な事柄により、企業は退職費用を効果的に予算化することが難しくなります。両者が退職に合意する合意離職の場合であっても、企業は不良雇用のために多額の金銭的リスクに直面します。
- 訴訟費用: 企業が従業員の解雇を決定し、従業員がその決定に異議を唱えた場合、企業は多額の訴訟費用に直面する可能性があります。例えば日本では、解雇は高度に規制されており、裁判所が定める特定の基準とプロセスに適合しなければなりません。例えば、雇用主は解雇を検討する前に可能な限りの救済策を尽くさなければなりません。これには、通常少なくとも6ヶ月に及ぶ業績改善計画(PIP)の実施も含まれます。すべての過程は、仲裁あるいは訴訟の可能性を考慮し、証拠として綿密に文書化されなければなりません。
- 生産性の損失と士気への影響: 不適切な雇用は、より大きなチームの士気と生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。業績不振の従業員や、業務にズレのある従業員は、チームの活力を乱し、全体的な効率を低下させ、有害な職場環境を作り出す可能性があります。これは現在のプロジェクトに影響を与えるだけでなく、他の従業員が不満を抱くことで離職率の上昇にもつながりかねません。
- 文化的適合性とコミュニケーションのミス: 国境を越えた採用では、文化的な適合性が専門スキルと同じくらい重要な場合が多くあります。人事チームは、人材離職の計画を立てる前に文化の違いを理解する必要があります。例えば日本では、現地の社会規範を理解し、職場の期待に高いレベルで適合することが不可欠です。文化的に合わない従業員は、摩擦や誤解を生み、顧客との関係を損なう可能性さえあります。その結果、研修、調停、風評被害などに関連する追加コストが発生する可能性があります。新入社員が企業文化に適応するのをサポートすることは、こうしたリスクを軽減するのに役立ちます。
グローバルな法務の現状と課題
特に社内の人事チームがその国の法律事情に精通していない場合はなおさらです。参考として、考慮すべき重要なポイントを以下に挙げます。
- 厳しい規制: 従業員の解雇は決して一筋縄ではいかず、将来的なリスクや影響が常につきまといます。例えば、日本の裁判所は、解雇が 「社会的に合理的 」で 「社会的に容認できる 」と判断されない限り、解雇を無効とする可能性があります。他の国々とは異なり、業績不振や不祥事だけでは解雇の十分な理由とはなりません。
- 試用期間の制限: ほとんどの国では試用期間を設けており、雇用主は正規雇用を確定する前に新入社員の業績や適性を評価することができます。しかし、法的権利であっても社会的期待とは異なる場合があります。試用期間があるからといって、不適切な従業員を解雇することが必ずしも簡単であるとは限りません。例えば日本では、最初の14日間が過ぎると、雇用主は試用期間終了後と同様に適切な手続きを踏まなければなりません。つまり、雇用主は試用期間を頼りにして、不適切な雇用のリスクを軽減することはできないのです。
- 全ての救済手段を尽くすこと: 解雇が検討される前に、雇用主は他のすべての救済措置が尽くされたことを証明しなければならないことがあります。日本では、PIPの実施、賃金の減額、自発的な退職の機会の提供などがこれにあたります。このような徹底的な処理には6ヶ月以上かかることもあり、その間も従業員には補償を続けなければなりません。
- 文化的感受性とコンプライアンス: 解雇に関する話し合いには細心の注意が必要です。日本や多くの国々では、従業員との話し合いで「解雇」という言葉を使わないよう勧告されているほどです。法律上、雇用を一方的に終了させることはできないからです。同様に、実質的な証拠なしに「業績不振」に言及することは、不当解雇の申し立てにつながりかねません。このようなニュアンスの違いは、離職手続きを複雑にするだけです。
グローバルなジレンマ
日本は厳格な労働者保護の代表例ですが、決して特殊な国でありません。アフリカからアジア太平洋(APAC)、中南米(LATAM)、中東、北米に至るまで、世界中の国々がそれぞれ厳格な労働法を定めています。
例えば、スペイン、ポルトガル、イタリアといったヨーロッパ諸国も、従業員の解雇に関しては大きな課題を課しています。スペインでは、雇用主は欠勤した従業員に直接連絡することさえできません。代わりに健康診断書を政府のポータルサイトで確認しなければなりません。このため、手続きが1年以上延長されることもあり、給与の減額支給を続けなければならないことも多くあります。
労働法も常に進化しています。GoGlobalでは、雇用者と被雇用者の関係に影響を与える年間500件を超える法改正の運用をお手伝いしております。このような法改正は、雇用者と被雇用者のどちらかに有利な方向にバランスを崩すことが多く、グローバル雇用に新たな複雑さをもたらします。
アジアでも南北アメリカでも、雇用リスクを効果的に管理するためには、これらの変化を理解し、法改正に対応することが重要です。
コストのかかる採用ミスを避けるためのヒント
管轄区域を越えて従業員を解雇する際のコストや課題を考えると、国際企業は積極的に採用活動を行うべきです。ここでは、誤った雇用を避けるためのヒントを紹介します。
- 厳格な選考と面接プロセス: 複数回の面接、文化的適合性評価、実践的スキルテストを含む徹底した選考プロセスを実施することが必要です。また、文化的・法的背景を理解する現地の専門家と協力することで、貴重な見識を得ることができます。
- 明確なコミュニケーションと文書化: 業績、文化的適合性、職責に関する期待を含め、雇用条件はすべて明確に伝え、文書化する必要があります。これにより、誤解のリスクを軽減し、将来起こり得る揉め事に対処するための明確な枠組みを提供することができます。
- 警告サインを早期に発見する: 採用過程において、問題のありそうな従業員の兆候を見逃さないようにしましょう。これには、協調性の欠如、フィードバックへの抵抗、文化的適合性の低さ、訴訟歴などが含まれます。こうした赤信号を早期に発見することで、採用の失敗を避けることができます。
- 現地の労働法に関する専門知識: 新しい国で雇用する前に、現地の労働法や規制を理解する時間を取りましょう。現地の人事専門家や法律アドバイザーと連携し、コンプライアンスを確保し、リスクを最小限に抑える戦略を立てることが重要です。
グローバル採用の効果を高める
誤った人材を採用することは、特に日本のような労働規制の厳しい国で事業を展開する国際企業にとって、広範囲に影響を及ぼしかねないコストのかかるミスです。
退職金や訴訟から生産性の低下や文化的なズレに至るまで、隠れたコストを理解することが、十分な情報に基づいた採用決定には必要です。
厳格なグローバル採用過程を採用し、現地の労働法について常に情報を得ることで、企業はこれらのリスクを軽減し、より強力で結束力のある国際チームを構築することができます。
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