LATAM拠点の最適地はどこか?:ブラジル vs. メキシコ — よくある質問とその回答

ブラジルとメキシコは、中南米(LATAM)で最大かつ最も多様な経済を持つ2大国であり、いまや地域成長への玄関口として世界中の企業から注目を集めています。
どちらも大規模な市場と豊富な人材を有していますが、成功への道筋はまったく異なります。
これは単なる地理的な選択ではありません。戦略、コンプライアンス、ビジネス文化、そしてタイミングといった多面的な視点からの判断が求められます。
先日開催された「Ask Me Anything」セッションでは、GoGlobalのビジネス&コーポレートサービス担当ディレクターであり、LATAM事業で20年以上携わってきた経験を持つクラウディア・ヌネス氏が、グローバル企業がLATAM拠点としてブラジルまたはメキシコを選ぶ際に直面する、最も重要な5つの質問に答えてくれました。
ブラジルとメキシコでの法人設立にはどのくらい時間がかかるのか?
書類対応に手間がかかることは想定していても、実際の設立完了までにどれほどの期間を見込むべきかは多くの企業にとって重要なポイントです。
- ブラジル:書類に不備がない場合でおおよそ30~45日。
- メキシコ:すべての書類が整っている状態で約4~6週間。
「これらはあくまで“最短の想定スケジュール”です」とクラウディアは言います。「最大の障壁は待ち時間ではなく、最初から正しい書類を揃えることにあります。」
両国とも、些細な不備や情報の不足で申請が却下または大幅に遅延する可能性があり、修正や再提出にはコストも時間も余計にかかります。各国での手続きで直面する可能性のある問題を詳しく見ていきましょう。
- ブラジルの課題:法人設立にあたっては、CPF(ブラジルの納税者番号)を持つ現地代表者の指定が必要であり、これは法的な資格を得るために不可欠です。すべての書類はポルトガル語に翻訳されている必要があり、公式かつ正確でなければなりません。また、ブラジルの労務および税務コンプライアンスは非常に複雑であり、近道は存在しません。
- メキシコの課題:州によって規則が異なるため、手続きは一貫性に欠ける「パッチワーク型」の制度となっています。外国企業向けの税制も複雑で、一部の業種ではメキシコ資本が過半数を保有していることが義務付けられるなど、業種別の制限も存在します。ブラジルと同様に、書類の不備や準備不足はよくある障害であり、申請遅延の原因となりがちです。
結論:書類を提出する前に、各国・各地域の要件に沿って綿密に計画を立てましょう。現地の規制に合わせて書類を正しく整備することで、後々の遅延やトラブルを未然に防ぐことができます。
ブラジルおよびメキシコにおける法人銀行口座の開設プロセスとは?
法人設立が完了したら、次に必要なのは現地の法人銀行口座の開設です。
では、この手続きはどの程度スムーズに進むのでしょうか?
- 前提条件:ブラジルとメキシコの両方で、口座開設には正式に登録された法人と有効な納税者番号が必要です。ブラジルではCNPJ (Cadastro Nacional da Pessoa Jurídica) 、メキシコではRFC (Registro Federation de Contribuyentes)です。
- 必要書類:定款、会社規則、事業所の住所証明、法定代理人の身分証明書、株主に関する書類を準備します。必要に応じてポルトガル語またはスペイン語に翻訳します。
- 予想所要時間:すべての要件を満たしている場合でも、口座開設までに通常1〜2か月を要します。
多くのメキシコの銀行は、外国法人の受け入れに消極的であるか、厳格な現地でのプレゼンス要件を課しています。一方、ブラジルの銀行では、法定代理人が実際に来店し、対面で署名を行うことが一般的に求められます。また、両国に共通して、厳格な「顧客確認(KYC)」およびマネーロンダリング防止(AML)」審査が実施されるため、事前準備が重要です。
重要なアドバイス:銀行の方針は早い段階で確認し、必要書類は正確かつ慎重に整えておくことが不可欠です。これにより、予期せぬ遅延や追加対応を未然に防ぐことができます。
ブラジルおよびメキシコにおける会計・報告義務とは?
コンプライアンスは選択ではなく必須事項です。中南米では今や税務当局とのデジタル連携が標準となっており、適切な対応が不可欠です。
- ブラジル: 毎年5月から7月の間に、SPED(Sistema Público de Escrituração Digital)システムを通じて年次申告を行います。帳簿はポルトガル語で作成し、現地の税務当局と連携(同期)されている必要があります。年間を通じて複数の税務申告があり、それぞれに厳格な基準が求められます。
- メキシコ:毎月の電子申告が義務付けられており、税務当局(SAT:Servicio de Administración Tributaria)とリアルタイムで連携されています。会計はスペイン語で作成し、厳格なXML形式の報告フォーマットに従う必要があります。
プロのアドバイス:既存の会計ソフトウェアでは、現地仕様に完全対応していなければ対応できません。クラウディア氏によると、税務当局の言語に対応しているだけではなく、税務申告のフォーマットやルールに対応した会計システムが必要です。
ブラジルおよびメキシコにおけるコンプライアンスリスクの軽減方法とは?
LATAMの税務・労働当局は厳格で、違反した場合のペナルティは非常に重くなります。また、デジタル監視ツールによって規制当局は即座に貴社のデータへアクセス可能です。クラウディア氏によると、以下の方法でリスクを回避することが重要です。
- 現地の専門家に投資する:現地の会計士、弁護士、信頼できるサービスプロバイダーを採用し、規則を熟知した体制を整えましょう。
- 現地の文化を理解する:コンプライアンスは書類対応だけでなく、人間関係や現地のビジネス慣習を理解することも同じくらい重要です。
- 常に最新の状態を維持:電子ファイリングシステムは急速に進化しています。システムとプロセスを常に柔軟に保ちましょう。
- マネーロンダリング防止(AML)と汚職防止:ブラジル・メキシコ両国ともに厳格な規制を実施しています。強固な内部統制と透明性の高い書類管理が求められます。
賢く投資を:現地の知識を軽視すると、事業停止や巨額の罰金といったリスクを招きます。今しっかり投資することで、将来の大きな損失を防ぎましょう。
ブラジル・メキシコで外国人従業員を雇用する際に知っておくべきこと
自社のチームをそのまま移転させることはできません。両国ともに外国人労働者に対して厳格な雇用枠(クォータ)を設けています。
- ブラジル:従業員の最低3分の2はブラジル国籍でなければなりません。
- メキシコ:外国人労働者は全従業員の10%を超えてはなりません。
この現実は、あなたの人材戦略や業務体制に大きく影響します。
雇用契約書はポルトガル語またはスペイン語で作成し、現地の労働法や法定福利を遵守しなければなりません。
ビザ取得手続きは複雑で時間がかかります。早めに準備を始め、移民専門家と連携しながら、一時的なビザと永住ビザの両方の選択肢を計画しましょう。
結論:ブラジル?メキシコ?それとも両方?
中南米(LATAM)での拡大先を選ぶ際の本当の問いは、「どこに進出するか」だけではありません。「どう進出するか」が重要なのです。
ブラジルもメキシコも大きなチャンスを提供します。しかし、適切な拠点選びは単なる数字の問題ではありません。人々や政策、進むペースを理解した上での長期的な戦略的判断が求められます。サンパウロで成功した方法がモンテレイでは通用しないこともあれば、その逆もあります。
LATAMでの成功は、帳簿上の数字と実際の現場で起こることの違いを知ることにかかっています。忍耐強く官僚的手続きを乗り越え、現地の信頼関係を築くことが不可欠です。変化し続けるコンプライアンス規則に常に先んじることも重要です。複雑さとたくましさが共存するこの地域では、現地の知見は「あると良いもの」ではなく、「絶対に必要なもの」です。
新規に事業を立ち上げるにせよ、既存拠点を拡大するにせよ、市場に参入するだけでなく、そこで成長・繁栄することが何より大切です。そのためには、単なる意欲以上のものが求められます。現地の知識、信頼できる助言、そして長期的な視点に立った戦略が不可欠です。
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