日本での就労ビザ申請ガイド:ステップごとの手続き解説

日本経済は新たな局面に入りつつあります。世界的に評価されるテック分野は成長を続け、過去2年間で海外直接投資は過去最高を更新しました。一方で、深刻な人材不足が続き、優秀なプロフェッショナルを確保する競争はますます加速しています。
採用担当者にとって、これはひとつの結論につながります。
グローバル人材の獲得は、もはや選択肢ではなく必須であるということです。
しかし、日本へ優秀な人材を招くには、独自の課題があります。就労ビザの取得、入国管理手続き、各種コンプライアンス対応など、まるで迷路のように感じられることもあるでしょう。
本ブログでは、そのプロセスをわかりやすく解説します。
日本で国際的なプロフェッショナルを合法的かつ効率的に、余計な遅延なく採用する方法をステップごとにご紹介します。
日本の就労ビザの種類を理解する
適切なビザを選ぶことは非常に重要です。誤った種類を選んでしまうと、採用の遅れや不要なトラブルにつながる可能性があります。
日本にはさまざまな就労ビザがありますが、プロフェッショナル人材の採用において中心となるのは主に2種類です。
技術・人文知識・国際業務(EHI)ビザ
EHIビザは、日本で働くプロフェッショナル人材に最も一般的なビザです。技術分野の専門家、国際業務に携わるビジネスパーソン、人文系分野のスキルを持つ人材向けに設計されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 審査期間 | 3〜4か月(繁忙期には延びる可能性あり) |
| 初回の在留期間 | 通常3年(1年・3年・5年から選択) |
| 必要書類 | 他のビザに比べて提出書類が比較的シンプル |
| 雇用主の変更 | 通知のみで変更可能 |
| 家族帯同 | 配偶者・子どもの帯同が可能 |
| 永住権 | 日本に10年間居住すると申請対象に |
このビザは柔軟性が高く、ビザ申請をやり直すことなく雇用主を変更できます。また、帯同可能なのは配偶者と子どものみです。
高度専門職(HSP)ビザ
HSPビザはポイント制のビザです。学歴、職務経験、年収、年齢、語学力、研究実績などでポイントを取得し、70点以上が必要となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 審査期間 | 3〜5か月 |
| 初回の在留期間 | 5年のみ |
| 必要書類 | 多い。すべての前職についての証明書類が必要 |
| 雇用主の変更 | 雇用主に紐づくため、転職時は再申請が必要 |
| 家族帯同 | 配偶者・子どもに加え、親の帯同も可能 |
| 永住権 | 80点以上で1年、70点以上で3年で申請可能 |
| その他の特典 | 配偶者も就労可能 |
高度専門職2号(HSP2)ビザ
日本ですでにHSPビザを持っているプロフェッショナルに向けた上位ビザで、より高い柔軟性が特徴です。
主な特徴:
- HSPビザを3年以上保持していることが条件
- 在留期間:無期限
- 雇用主の変更:通知のみで可能
- 活動範囲:ほぼすべての就労関連業務が可能
- ポイント:転職時もポイント要件を維持または向上する必要あり
HSP2は、高い技能要件を維持しながら、就労の自由度を大きく広げる制度です。
就労ビザにおける給与水準の考え方
日本の就労ビザには、法的に定められた「最低給与額」はありません。しかし、入管当局は 同等の業務に就く日本人と比較して妥当な給与であるかを重視します。
給与の妥当性を判断する際に影響する主な要素は以下になります。
- 年齢と職務経験
- 学歴
- 業界水準
- 職務内容・責任範囲
雇用主は、ビザ審査の過程で 提示する給与が適切である理由を説明できるよう準備しておく必要があります。
就労ビザ取得の一般的なタイムライン
ビザの審査期間は、多くの人が想定しているよりも長くなる傾向があります。以下は現実的な目安です。
| プロセス | 期間 |
|---|---|
| 在留資格認定証明書(COE)の申請から交付まで | 3〜4か月 |
| 日本大使館・領事館でのビザ申請 | 約2週間 |
| ビザ種類の変更や転職に伴う手続き | 6〜8週間 |
就労ビザ取得のステップ別プロセス
日本のビザ手続きは、段階ごとに整理すると理解しやすくなります。
ステップ1:必要書類の準備(約2週間)
申請者と企業の双方が必要書類を揃えます。
申請者側の書類:
- パスポートのコピー
- 最近のパスポートサイズ写真
- 履歴書(CV)
- 最終学歴の卒業証明書および成績証明書
- 日本語能力試験(JLPT)認定証(該当する場合)
- 過去の就業先の在職証明書(特にHSPの場合は必須)
企業側の書類:
- 会社の登記書類
- 事業概要または事業計画
- 納税証明書
- 雇用契約書
- 企業の正当性を示す資料
書類準備は遅延が発生しやすいポイントです。 正確さがスピードより重要 になります。
ステップ2:在留資格認定証明書(COE)の申請提出
雇用企業が、日本の入国管理局へCOE申請を提出します。
提出は企業自身または認可を受けた代理人(行政書士や弁護士など)を通じて行われます。
COEはビザ手続きの中心となる書類で、これがなければビザ申請は進められません。
ステップ3:COEの審査・交付(2〜4か月)
入管局が申請内容を審査し、追加資料を求める場合もあります。
COEの交付は、以下を証明します。
- 申請者がビザ要件を満たしている
- 雇用企業が適法である
ステップ4:大使館・領事館でのビザ申請(約2週間)
COEが交付されたら、申請者は最寄りの日本大使館・領事館でビザ申請を行います。
必要書類:
- COE(原本)
- 有効なパスポート
- ビザ申請書
- パスポート写真
- ビザ申請費用(約3,000〜6,000円/20〜40米ドル)
ビザが承認されると、日本への入国が可能になります。
ステップ5:日本入国と在留カードの受領
COE発行後 3か月以内 に日本へ入国する必要があります。
成田、羽田、関西などの主要空港で、入国時に在留カードが発行されます。
在留カードは法的な在留証明であり、行政手続きの多くで必須となります。
ステップ6:市区町村での転入届(14日以内)
入国後2週間以内に、市区町村役場で住所登録を行います。
登録により以下が可能になります:
- 住所の法的登録
- 各種行政サービスへのアクセス
- 銀行口座開設や住宅契約
期限を過ぎると、法的な問題が生じる可能性があります。
雇用主変更・ビザ種類変更のガイドライン
日本で就労ビザを持つ人が転職する場合、その手続きはビザの種類によって大きく異なります。柔軟に変更できるビザもあれば、厳格な期限や再申請が必要となるビザもあります。
これらの違いを理解することは、既に就労ビザを持つ候補者の採用や、社内の人材異動を計画するHRマネージャーにとって非常に重要です。
EHIビザ(技術・人文知識・国際業務)
- 入管への「契約機関に関する届出」を提出
- 再申請は不要
- 処理期間:約1週間
- 新しい雇用先で即時就労が可能
HSPビザ(高度専門職)
- 3か月以内に新しい雇用先を見つける必要がある
- 新たにHSPビザを申請し直す必要がある
- 新しいビザが許可されるまで就労開始は不可
HSP2ビザ(高度専門職2号)
- 入管への簡易な届出で雇用主変更が可能
- ポイントは基準値以上を維持する必要がある
- 標準のHSPより高い柔軟性を持つ
日本の就労ビザでよくある落とし穴
日本の就労ビザ制度は、経験豊富な人事チームであっても課題に直面することがあります。
事前に代表的な落とし穴を理解しておくことで、数週間の遅延を防ぎ、ストレスを軽減し、余計なコストを避けることができます。
- 処理期間の長期化: 以前は約2か月だった審査期間が、現在は混雑期を中心に3〜4か月かかるケースが一般的です。
- HSPの複雑な書類要件: すべての前職の在職証明書を収集する必要があり、時間がかかるため提出が遅れやすい点が大きなハードルになります。
- 雇用主固定の問題: HSPビザ保持者は転職時に制限があり、人材の流動性に影響が出ることがあります。
- COEの3か月期限: COE発行後の入国期限を過ぎると、申請手続きを最初からやり直す必要があります。
- ポイント計算の誤り: HSP申請者が自己判断でポイントを過大評価するケースも多く、正確なポイントチェックが不可欠です。
扶養家族ビザと就労許可
社員が家族を伴って日本へ赴任する場合、扶養家族ビザの仕組みを理解しておくことが重要です。
原則として、扶養家族は日本での就労が認められていません。しかし、入管庁から適切な許可を取得することで、配偶者などの対象家族が一定範囲内でアルバイト勤務を行うことが可能になります。
扶養家族の就労に関する主なガイドラインは以下のとおりです。
- 原則として就労不可
- 許可取得後は週28時間まで就労可能
- 年間収入は約130万円が上限
- 源泉徴収あり、社会保険への加入義務なし
家族が扶養家族ビザの対象になる範囲は、ビザタイプによって異なります。
| ビザタイプ | 扶養対象家族 |
|---|---|
| EHI | 配偶者、子ども |
| HSP | 配偶者、子ども、両親 |
| HSP2 | 配偶者、子ども、両親 |
ご覧のとおり、HSPビザは最も広い扶養対象範囲を提供しています。
よくある質問への回答
Q1: ビザの承認前に社員は就労を開始できますか?
いいえ。まずCOEの承認、ビザの発給、そして日本への入国が必要です。
Q2: ビザ申請が却下される一般的な理由は?再申請は可能ですか?
- 書類不備
- 資格不足
- 雇用企業の正当性に関する懸念
- 給与が職務に見合わない
- HSPポイント不足
再申請は可能ですが、3〜4か月の審査期間が再スタートします。
Q3: 扶養家族は日本で就労できますか?
入管庁の別途許可を得た扶養家族は、週28時間まで就労可能です。
Q4: ビザ取得にかかる一般的な費用は?
- 大使館ビザ手数料:3,000〜6,000円(約20〜40米ドル)
- 書類翻訳・認証費用
- 弁護士・行政書士費用(任意)
- 宅配費用や過去の証明書類の取得費用
Q5: ビザと在留カードの違いは?
- ビザ:日本への入国を可能にする許可
- 在留カード:公式な在留証明書。銀行口座開設、住宅契約、各種行政手続きに必要
Q6: 日本語は必要ですか?
いいえ。JLPTなどの資格はHSPポイントに有利ですが必須ではありません。日常生活では基礎的な日本語があると便利です。
Q7: ビザの延長はどのように行いますか?
有効期限の3か月前までに申請が必要です。引き続き就労している証明や納税状況の証明が求められます。処理期間は通常2〜4週間です。
Q8: 社員が退職した場合はどうなりますか?
ビザの種類ごとの対応は以下の通りです。
- EHI/HSP2: 入管に通知。社員は3か月以内に新しい就職先を見つける必要があります。
- HSP: 新しいHSPビザを申請し承認されるまで就労できません。
ビザ取得が比較的スムーズな業界・職種
すべての就労ビザ申請は法的要件を満たす必要がありますが、特定の業界では承認の前例が確立しており、審査がより迅速かつスムーズに進む傾向があります。
明確な資格、職務内容の定義、実績の証明がある職種ほど、審査でのハードルが低くなります。
ビザ取得が比較的容易な業界例:
- 技術・エンジニアリング:ソフトウェア開発、ITインフラ、技術系エンジニアリング職
- 教育・語学指導:教師、インストラクター、語学専門職
- 国際ビジネス・貿易:グローバル営業、調達、事業開発職
- 金融・会計:会計士、監査担当者、金融アナリスト
- 研究開発:科学者、研究室研究者、イノベーション関連職
候補者の専門性とビザカテゴリとの適合性を明確に示した申請は、手続きが迅速に進みやすく、遅延を減らしスムーズな入社手続きを支援します。
企業に向けた重要なポイント
日本での就労ビザ管理は複雑であり、些細なミスや期限の遅れが大幅な遅延、社員の満足度低下、業務運営への影響を引き起こす可能性があります。
スムーズな国際採用のためには、事前の計画と手続きの理解が不可欠です。
企業が押さえておくべき優先事項:
- 早めの準備: 処理期間を見込んで、採用スケジュールに4〜5か月の余裕を持たせる。
- 適切なビザを選ぶ: EHIは柔軟性が高く、HSPは永住権取得の早道となる。
- 正確性の維持: 書類不備や誤りは、遅延や却下の最大の原因。
- 給与の正当性: 提示する給与が日本市場の水準に沿っていることを示す準備をする。
- 定着計画: HSPビザの雇用主変更制限を理解し、従業員の期待を管理する。
- 期限の管理: COEの有効期限や市区町村での登録期限は厳格で、延長不可。
- 扶養家族の計画: 扶養家族ビザの規則や就労許可を遵守する。
- 予算管理: 行政手数料、書類翻訳費用、任意の法律サポートを考慮する。
- 専門家と連携: 現地の専門家や入管手続きの専門家を活用することで、コストのかかるミスを防ぎ、申請手続きを効率化し、プロセス全体における安心感を得られる。
グローバル人材を日本へ迎えるために
日本の就労ビザ制度は複雑ですが、採用計画を阻む必要はありません。
早めの準備、期限の管理、適切なビザの選択、扶養家族や給与要件への対応を徹底しましょう。また、ビザ手続きをサポートできる信頼できるビジネスソリューションプロバイダーと連携することも重要です。これらのポイントに注意することで、スムーズな手続きと安定した人材確保が可能になります。
日本の次なる成長期において、優秀な国際人材の確保はもはや選択肢ではなく、企業にとって不可欠な戦略です。明確なロードマップと着実な実行により、グローバル人材の日本での採用は効率的で、簡便かつ持続可能なものとなります。
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