2026年 日本進出のための法人設立ガイド

海外企業にとって日本は、容易に参入できる市場ではありません。
努力と信頼を積み重ねてこそ、はじめて参入が可能となる市場です。
日本は現在も、世界で最も安定し、洗練されたビジネス環境のひとつであり続けています。
法的な確実性、質の高い豊富な人材、そして確実に機能するインフラを備えています。
ペンシルベニア大学ウォートン・スクールによる評価では、日本は世界で2番目にビジネスに適した国とされています。
この評価は重要ですが、法人設立が容易であることを意味するものではありません。
日本では、入念な準備、現地理解に基づく専門知識、人との関係構築が成果を左右します。
安易な近道は信頼を損ない、結果として事業の進展を妨げることになります。
本ガイドでは、2026年に日本で法人を設立する際に押さえておくべきポイントを整理します。
法人形態、コスト、スケジュール、リスク、ならびに各判断に伴うトレードオフ(利点と課題)を解説します。
なぜ日本は今なお国際展開先として選ばれ続けるのか
日本は新興市場ではありません。
成熟し、洗練された市場であり、確立された消費者基盤と多様な産業構造を有しています。
海外企業は日本に進出することで、次のような価値を得られます。
- 世界有数の巨大な消費経済
- 厚みのあるB2Bおよびエンタープライズ需要
- 高度な教育を受けた、定着率の高い人材
- 予測可能で透明性の高い規制環境と、法の支配が確立された制度
- アジア全域につながるグローバルな物流網
日本が特に優れている分野は以下の通りです。
- インフラ
- イノベーション
- 人材の質
- コーポレートガバナンス
- 長期的な視点に立った経営
しかし、見過ごせない現実があります。
日本市場は、海外のプロセスをそのまま受け入れる市場ではありません。
進出する企業側に、日本への適応が求められます。
信頼、契約、人材、そして継続的な収益を得るためには、
日本国内における法的な拠点の設立が不可欠です。
最初に向き合うべき戦略的な問い
書類手続きに入る前に、まずひとつの問いを立ててください。
日本は、貴社のグローバル戦略の中でどのような役割を担うでしょうか。
成功する海外展開には、明確な目的と将来像があります。
- 日本国内で契約を結ぶ必要がありますか?
- 日本で従業員を雇用する予定はありますか?
- 日本の顧客から、現地法人の設立を求められていますか?
- 日本市場に長期的にコミットする計画はありますか?
もし日本があくまで試験的な位置づけであれば、現地法人の設立は時期尚早かもしれません。
その場合、海外雇用代行サービス(EOR:Employer of Record)を活用してチーム構築から始めることが、有効な選択肢となることもあります。
一方で、日本を戦略的かつ長期的な市場と位置づけるのであれば、安易な近道は将来的にコストとなって返ってくる可能性があります。そのため、できるだけ早い段階から法人設立について検討を始めることが望まれます。
日本での法人形態を選ぶということ
どの法人形態を選ぶかは、将来を左右します。
それは、以下の要素を大きく形づくるからです。
- 信頼性と企業としての評価
- 銀行口座開設のしやすさ
- 税務、ガバナンス、成長の選択肢
以下は、日本における主な法人形態の比較です。
| 法人形態 | 向いているケース | 主なメリット | 主なトレードオフ |
|---|---|---|---|
| 株式会社(KK) | 長期的・エンタープライズ向け | 最大限の信頼性 | 形式性が高い |
| 合同会社(GK) | 機動性を重視した子会社 | 低コスト・スピード | 認知面でわずかな差 |
| 支店 | 市場テスト | 設立コストが最小 | 独立した法人ではない |
株式会社(KK):確立されたスタンダード
株式会社は、日本における最も一般的な法人形態で、米国のC Corporationに最も近い存在です。
高い信頼性と認知度を持ち、企業としての本気度を明確に示す形態です。
KKが選ばれる理由
- 銀行や取引先からの高い信頼性
- エンタープライズ顧客に好まれる
- 株式発行が可能
- 明確なガバナンス構造
KKを選ぶ際の留意点
- 定款の公証が必要
- 年1回の株主総会が必須
- コンプライアンスがより形式的
- 設立コストはやや高め
向いている企業
日本で長期的な収益基盤を築く企業に適しています。
日本が成長戦略の中核にあるのであれば、KKは最も堅実な選択肢です。
合同会社(GK):柔軟な選択肢
合同会社は、米国のLLCに近い法人形態です。
シンプルかつスピーディーで、適切に設計すればコスト効率の高い選択肢となります。
GKが選ばれる理由
- ガバナンス負担が軽い
- 定款の公証が不要
- 設立までのスピードが早い
- 内部運営の自由度が高い
GKの制約
- 公開株式の発行は不可
- 伝統的な取引先にはなじみが薄い場合がある
- 原則として社員が直接経営に関与
向いている企業
海外企業の日本子会社や、最小限の体制での市場参入に向いています。
形式よりもスピードを重視する場面では、GKは現実的な選択肢となります。
支店:最小コストで設ける拠点形態
支店は、独立した法人ではありません。
あくまで、海外本社の延長として位置づけられます。
支店が選ばれる理由
- 設立コストが低い
- 登録までが早い
- 資本金が不要
支店のリスク・制約
- 本社が直接責任を負う
- 信頼性は限定的
- 銀行取引が難しくなる場合がある
- 事業上の独立性が低い
向いているケース
短期的な市場検証や、代表拠点としての活動に適しています。
資本金:法的最低額と実務上の現実
法的には、株式会社(KK)および合同会社(GK)は、いずれも資本金1円から設立することが可能です。しかし、資本金を極端に低く設定すると、実務上さまざまな課題が生じる可能性があります。
新たに法人を設立する際に、投入する資本金額を検討するうえで考慮すべきポイントは以下の通りです。
事業運営上の必要性
想定している資本金で、初期および継続的な運営コストを十分に賄えるでしょうか。
これには、賃料、人件費、専門家への報酬などが含まれます。
規制・制度への対応
想定する資本金は、各種法令・制度上の要件を満たしていますか。
たとえば、ビザ申請では、500万円以上の資本金が求められるケースが一般的です。
事業としての信頼性
資本金は、実態のある事業運営を支え、企業としての信用を担保できる水準でしょうか。
あまりに低い金額は、手続きの停滞や信頼低下につながることがあります。
実務上の資本金の目安
| 利用ケース | 推奨される資本金 |
|---|---|
| 基本的な設立 | 100万〜500万円 |
| ビザスポンサー | 500万円以上 |
| 高い信頼性を重視 | 1,000万円以上 |
日本では、資本金は公開される情報です。その金額は、企業の姿勢や本気度を示す指標にもなります。そのため、グローバルなビジネス支援の専門家の助言を得ながら、慎重に決定することが望まれます。
2026年に想定すべきスケジュール
日本は効率的なビジネス環境を備えていますが、法人設立は短期間で完了するものではありません。なかでも、銀行口座開設は重要かつ時間を要するプロセスです。
一般的な設立スケジュール
| フェーズ | 期間 |
|---|---|
| 法人登記 | 2〜8週間 |
| 銀行口座開設 | 1〜3か月以上 |
| 本格稼働まで | 3〜6か月 |
コーポレートガバナンス
法人設立において、計画通りに進んでいても遅れやすいのがコーポレートガバナンスです。
日本では、形式的手続き、現地でのプレゼンス、そして信頼が重視されます。
法的には最低限の要件しか定められていませんが、実務では市場の期待がそれ以上の基準となります。
株式会社(KK)の取締役について
- 書類上は柔軟
- 取締役は最低1名で可
- 取締役会は任意
- 日本居住の要件はなし
しかし、現実は異なります。
なぜ現地取締役が重要か
- 銀行は対面での打ち合わせを求める
- 官公庁は現地担当者を好む
- 業務の進行がスムーズになる
- 信頼性が向上する
ベストプラクティス
居住する代表取締役を任命することが推奨されます。
必要に応じて、一時的な対応策も存在します。
コーポレートセクレタリーは任意でも有効
日本ではコーポレートセクレタリーは法的に必須ではありませんが、業務効率を高める目的で任命する企業もあります。
コーポレートセクレタリーがサポートする主な業務は以下の通りです。
- 年次株主総会の運営
- 法定書類の提出
- 税務関連の期限管理
- 会社記録の管理
- 継続的なコンプライアンス対応
コーポレートセクレタリーを任命することで、管理業務やコンプライアンス対応に時間を割くことなく、経営陣が戦略的な優先事項に集中できるというメリットがあります。
銀行口座開設のハードル
法人設立において、多くの海外企業がつまずくのがこのステップです。
日本での銀行口座開設は慎重に進める必要があります。というのも、申請が却下されると、長期的な影響を及ぼす可能性があるためです。
特に注意すべき点として、一度銀行で申請が却下されると、原則として同じ銀行に再申請することはできません。
そのため、初回申請前の入念な準備が不可欠です。
ただし、一行での却下が、日本国内の他の銀行への申請を自動的に妨げるわけではありません。
最初の却下につながった問題点を適切に解消すれば、他行への申請は可能です。
日本の銀行は、厳格なKYC(顧客確認)およびAML(マネーロンダリング防止)規制を適用しています。
保守的な運営が基本で、安定性、透明性、そして日本市場への長期的なコミットメントを重視しています。
日本の銀行が重視する点
- 明確な事業計画
- 日本国内の物理的なオフィス住所
- 事業活動に見合った十分な資本金
- 居住取締役または現地上級管理職の存在
- 一貫性と完全性のある書類
- 実績のある事業運営
よくある却下の要因
- 実態のないバーチャルオフィス、または実質的な事業活動を伴わないサービスオフィス
- 極端に少ない資本金構成(例:資本金1円)
- 日本国内にリーダーや意思決定者がいない
- 事業目的が不明確
- 暗号資産や金融商品関連など、リスクが高いと判断されやすい業種
重要な補足事項
- 弁護士事務所の住所や、信頼できるビジネスソリューションパートナーを通じて提供されるサービスオフィスであっても、銀行がその関係性を正しく理解し、実態のある事業運営を確認できる場合には、受け入れられる可能性があります。
- 最終的な実質的支配者は日本国内外を問いませんが、所有関係は明確かつ完全に開示する必要があります。
書類対応と翻訳
日本のビジネスは、日本語を前提に動いています。
すべての公的書類は、日本語での対応が求められます。
対象となる主な書類は以下の通りです。
- 定款
- 銀行関連書類
- 税務申告書類
- 雇用契約書
- 賃貸借契約書
翻訳の不備は、手続きの遅延につながります。
専門家による適切な対応が不可欠です。
継続的なコンプライアンスは必須
法人設立は、日本でのビジネスの始まりにすぎません。
設立後も、以下のような継続的な義務が発生します。
- 法人税の申告
- 会計・経理業務
- 社会保険関連の届出
- ガバナンス体制の維持
- 関連法規の継続的な確認
期限を守らなければ、ペナルティやリスクは速やかに拡大します。
日本法人が戦略的に有効となるケース
以下のような要件がある場合、法人設立は適切な運営モデルとなります。
- 日本国内での契約締結
- 直接雇用
- 日本での給与支払い体制
- ビザのスポンサー
- 資産の保有
- 日本市場への長期的なコミットメント
法人を設立することで、次のような価値が得られます。
- コントロール
- 信頼性
- 安定性
- 市場へのアクセス
海外雇用代行サービス(EOR:Employer of Record)と比べると、管理面での負担は大きくなります。
しかし、その分、より強固な基盤を築くことができます。
よくあるご質問(FAQ)
日本での法人設立には、つまずきやすいポイントがいくつかあります。
それらを早い段階で理解しておくことで、後々の想定外を減らすことができます。
以下の回答は、現地での実務経験に基づくものです。
制度上のルールではなく、「日本では実際にどう運用されているか」を反映しています。
日本に現地取締役は必要ですか?
法的には不要ですが、実務上は必要です。
- 銀行は居住取締役を好みます
- 貸主(オーナー)も現地責任者を求めます
- 行政機関からの信頼も得やすくなります
ベストプラクティス
たとえ一時的であっても、現地取締役を任命することが推奨されます。
多くの場合、信頼できるグローバル・ビジネスソリューションプロバイダーを通じて対応可能です。
日本の銀行口座は必要ですか?
はい。必須です。
日本国内の銀行口座は、以下の用途に必要となります。
- 給与支払い
- 取引先からの入金
- 税金の支払い
- ビザ申請
- 日常的な事業運営
バーチャルオフィスは使えますか?
法的には可能ですが、実務上は課題が多くあります。
日本の銀行はバーチャルオフィスを厳しく審査します。
実態のある事業活動を確認できない場合、申請が却下されるケースが少なくありません。また、取引先や規制当局からの信用面で懸念が生じることもあります。
一方で、弁護士事務所の住所や、信頼できるビジネスソリューションプロバイダーが提供するサービスオフィスであれば、受け入れられる場合があります。
重要なのは透明性です。銀行が関係性を正しく理解し、実質的な事業運営を確認できる必要があります。
実際の設立期間はどれくらいですか?
3〜6か月を想定してください。
外国企業が日本法人を100%所有できますか?
はい。可能です。
日本では完全な外資所有が認められており、現地株主は不要です。
撤退したい場合はどうなりますか?
解散には時間がかかります。
一般的に、以下が必要となります。
- 数か月の期間
- 正式な清算手続き
- 税務上の整理
- 官報公告
将来的に再進出の可能性がある場合は、休眠という選択肢もあります。
法人を放置することは決して避けてください。
日本語対応は必要ですか?
はい。必要です。
外注で補うことは可能ですが、バイリンガル人材がいる方がより円滑です。
英語のみでの運営は、実務上さまざまな壁に直面します。
その前提で計画を立てることが重要です。
日本は「スピード」ではなく「本気度」と「現地対応」を評価する
日本は、スピードを評価する市場ではありません。
評価されるのは、コミットメント、入念な準備、そして現地に根ざしたアプローチです。
日本で成果を上げている企業は、プロセスを尊重し、長期的な視点で投資を行っています。そして、日本の実務を本当に理解している人材に頼っています。それは、現地の専門知識、日本語での対応力、そして重要な局面での実行力を意味します。
日本での法人設立は、精度が求められる作業です。厳格なルールのもと、書類で管理され、細かくチェックされます。適切な現地パートナーがいれば、摩擦を減らし、想定されるリスクを先回りして対処することができます。
複雑さが避けられない局面でも、前進を止めません。
日本が成長戦略の一部であるなら、真剣に取り組むことが重要です。
煩雑でありながら極めて重要な実務を確実に担える、経験豊富な現地の専門家と協業してください。
そうすることで、日本での事業展開は、初日から確かな基盤の上に築かれます。
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