HMRC ERS申告:グローバル企業が知っておくべきポイント

英国において、株式やストックオプションなどの株式報酬は、優秀な人材の採用・定着に有効な手段です。しかし同時に、多くのグローバル企業が見落としがちなコンプライアンス対応が伴います。それが、HMRCに対するEmployment Related Securities(ERS)の年次申告です。
EOR(Employer of Record)を通じて運用している場合でも、英国に法人を設立している場合でも、英国で株式報酬を付与しているのであれば、ほぼ確実にERS申告の義務が発生します。
申告期限を過ぎた場合、たとえ申告内容がない場合であっても、自動的にペナルティが科される可能性があります。
ERS申告とは何か
Employment Related Securities(ERS)とは、従業員や取締役に対して、雇用に関連して付与される株式や株式報酬を把握するための、英国歳入関税庁(HMRC)の制度です。
対象となる報酬には、以下のような幅広いものが含まれます。
・ストックオプション
・譲渡制限付株式(RSUs)
・従業員株式購入制度(ESPPs)
これらのいずれかが英国の給与体系に含まれる従業員に付与されている場合、または権利確定・行使されている場合には、たとえ発行会社が海外法人であっても、HMRCへの制度登録および年次のERS申告が必要となります。
見逃せない税務年度と申告期限
英国の税務年度は、毎年4月6日から翌年4月5日までです。ERSの年次申告は、HMRCのオンラインシステム「Government Gateway」を通じて提出する必要があります。
| 項目 | 期限 |
|---|---|
| 英国税務年度終了 | 4月5日 |
| ERS年次申告期限 | 同年7月6日 |
| 新規スキーム登録(該当する場合) | 初回付与後の7月6日 |
2025/2026税務年度(2025年4月6日〜2026年4月5日)については、すべてのERS申告を2026年7月6日までに提出する必要があります。
重要なのは、該当年度に報告対象の取引がなかった場合でも申告義務は発生する点です。登録されているスキームについては、ゼロ申告(nil return)であっても提出が必要です。
申告が遅れた場合、または未提出の場合には、100ポンドからの固定ペナルティが自動的に課され、未対応の期間が長くなるほど加算されていきます。
EORと現地法人:責任の所在はどこか
多くのグローバル企業がつまずくのがこのポイントです。結論は、英国における雇用形態によって異なります。
EOR(Employer of Record)の場合
英国でEORを通じて人材を雇用している場合、雇用法およびPAYE(源泉徴収)上の法的雇用主はEORとなります。ただし、ERS申告の義務は、給与を管理している主体ではなく、実際に株式報酬を付与している主体(通常は親会社やクライアント企業)に紐づきます。
EORスキームにおいては:
・ストックオプションの行使やRSUの権利確定など、課税対象となるイベントについては、EORが給与処理を通じてPAYE、所得税、社会保険料(NICs)の対応を行います
・年次の株式報酬申告については、複数の企業に責任が及ぶ可能性がありますが、いずれか一社が提出すれば義務は充足されます。実務上は、英国のPAYE番号を持つEORが申告を行うケースが一般的です
・企業側は、付与日、行使日、権利確定スケジュール、評価額など、すべての株式報酬イベントについて、EORが適切に把握できるよう情報連携を行う必要があります
・これが適切に管理されていない場合、コンプライアンス上のリスクは最終的に企業側が負うことになります
適切なEORパートナーであれば、株式報酬イベントの把握や源泉徴収対応のプロセスを整備していますが、ERSの登録および申告そのものは、契約上明確に委託されていない限り、原則としてクライアント企業側の責任となります。
英国法人(現地法人)の場合
自社で英国の子会社や支店を設立している場合、責任はより明確であり、自社側に直接帰属します。
・初回付与があった年度の翌年7月6日までに、すべての株式報酬スキームをHMRCに登録(PAYE Online経由)する必要があります
・登録された各スキームについては、活動の有無にかかわらず、毎年ERS申告を行う必要があります
報告が必要な内容
ERS申告の内容はスキームの種類によって異なりますが、一般的には以下の項目が対象となります。
・付与:付与されたオプションや株式の数、行使価格、付与時の時価、HMRCと合意した評価額
・行使・権利確定:日付、株式数、その日の時価、従業員が支払った金額
・失効・取消:当該年度中に失効または取り消されたオプション
・売却:従業員による株式売却(税制優遇の適用に影響する可能性があるもの)
・評価額:特に未承認スキームやEMIオプションにおいて重要で、HMRCとの合意評価が税務上の取り扱いの前提となる
これらの情報は、すべて正確かつ完全である必要があります。不備や漏れがある場合、HMRCによる調査の対象となる可能性があります。
株式報酬コンプライアンスを後回しにしない
ERS対応は、いわば“グレーゾーン”に置かれがちな領域です。株式報酬(エクイティ/法務)、人事、給与、財務と複数の機能にまたがるため、それぞれのチームが「他が対応しているはず」と考えやすい領域でもあります。
しかし実際には、グローバル人材の増加、海外主導で運用される株式報酬制度、複雑なEORスキームなどが重なることで、各要素は自然にはつながりません。
対応を誤った場合の影響は、単なるペナルティにとどまりません。
GoGlobalが提供するサポート
英国におけるERSコンプライアンス対応は、それ単体でも十分に複雑です。さらに、グローバル人材、クロスボーダーの株式報酬制度、EORと現地法人の違いといった要素が重なることで、実務負担は一層大きくなります。
GoGlobalのグローバル雇用エキスパートチームは、英国における株式報酬コンプライアンスの不確実性を解消し、EORスキームにおける株式報酬イベントの適切な運用設計から、英国法人におけるERS登録や年次申告の準備支援まで、実務に根ざした体制と現地専門知識により、HMRCへの適切な対応を実現します。社内チームに過度な負担をかけることなく、コンプライアンスを維持することが可能です。
初めて英国でストックオプションを付与する企業から、複雑な株式報酬制度を伴う大規模なグローバル展開を進める企業まで、GoGlobalは、適切な雇用、正確な給与処理、そして期限内の申告を一貫して支援します。
英国でのコンプライアンス対応や、他国における株式報酬付与についてご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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