M&Aカーブアウトにおける人材移行の「X」要因
アンドリュー・リンドクイスト
GoGlobalパートナー
M&A、特にカーブアウト取引では、常に時間との戦いです。売り手の組織から買い手が新たに買収する組織へ人材を異動させる期限は、往々にしてタイトです。最高のシナリオを目標とした場合、目標が非現実的なものになる可能性もあります。
M&A取引における人材異動の複雑さは、単純なロジスティクスや取締役会での交渉にとどまりません。戦略的プランニング、法令遵守、従業員の士気の維持などにも関わってきます。
このブログでは、バイヤーがM&Aカーブアウトにおける人材異動を計画する際に考慮すべき「X」の要素を、ディール前のサポートからディール後のオペレーションまで明らかにします。
雇用形態の選択肢を探る
早期に決定することが重要なのは、異動する従業員にとって適切な雇用形態を決定することです。
- 法人設立:新しい法人を設立することは、多くの場合、従業員数が多い場合に必要であるが、特に規制が複雑な国では時間がかかる。このプロセスには、給与登録や現地の銀行口座の開設を含め、6ヶ月以上かかることもある。
- 海外雇用代行サービス(EOR): 少人数または暫定的なソリューションの場合、EORの方が迅速かつ柔軟なオプションとなります。EORは、従業員に対する法的責任を負い、面倒な法人設立手続きを省略することができます。
- 非居住者給与設定: 法人設立もEORも実行不可能な場合、非居住者給与支払設定を検討することができます。このオプションはカナダやヨーロッパで最もポピュラーなもので、従業員は新しい組織で働きながら自国で給与を受け取ることができる。しかし、税務コンプライアンスや現地の雇用法に関する複雑な問題が生じる。
法人設立を超えて:運営準備
法人設立は最初のステップに過ぎません。法人を運営するために必要な時間も考慮しなければなりません。
- 給与登録: 法人設立後、給与登録が必要となります。このプロセスは国によって異なり、現地の複雑な規制を理解する必要があります。
- 現地での支払い方法: 給与計算は、現地の支払方法がなければ処理できません。通常、現地の銀行口座を開設する必要があります。この手続きは、数週間から数カ月かかることもあります。
- 現地法の遵守: 新会社が現地の労働法を遵守していることを確認する必要があります。コンプライアンス違反は、法的問題や風評被害につながる可能性があります。
駐在員の例外:ビザの管理
海外駐在員の再雇用は、M&Aのカーブアウトにおいて独特の課題をもたらします。彼らのビザは多くの場合、現在の雇用主の法人格に紐付いています。従って、このような従業員の異動には、以下のような問題が発生する可能性があります。
- ビザの移行: 多くの場合、駐在員のビザを新しい法人に移さなければなりません。この手続きには時間がかかり、数週間から数ヶ月かかることがあります。
- 新規ビザ申請: ビザの移管が不可能な場合、新たなビザ申請が必要となり、さらに複雑さを増します。このような課題があるため、駐在員は他の従業員と同じ時期に異動できない可能性があります。想定される遅れを考慮し、その時々に応じた解決策を検討する必要があります。
人材の異動:法的留意点
従業員の異動方法は、現地の雇用法や取引内容によって異なります。
- 現地の枠組み: 人材の異動方法に影響を与える法的枠組みが存在する場合があります。例えば、英国では、事業譲渡(雇用の保護)規則(TUPE)が適用される場合があり、事業譲渡中に従業員の雇用条件を維持することが義務付けられています。
- 解雇と再雇用:場合によっては、解雇・再雇用モデルが使用されることもあります。この場合、手続きは簡素化されますが、年功序列と退職金の扱い方において課題が生じる可能性があります。
- 退職に関する考慮事項: 退職金の扱いを理解することは、異動のコストや複雑さに大きな影響を与える可能性があるため重要です。要件は国や契約条件によって異なります。
福利厚生の評価と実施
異動する従業員に提供される福利厚生を検討する必要があります。多くの国では、新しい雇用主が同様の報酬や福利厚生を提供することが法的に義務付けられています。これが義務付けられていない場合でも、同等の福利厚生を提供できなければ、不満や離職につながる可能性があります。
- 報酬と福利厚生の一致: 完全に一致させることは不可能かもしれませんが、会社は同等の福利厚生を提供するよう努力すべきです。現金手当やその他の報酬は、その差を埋めるのに役立ちます。
- グローバル従業員福利厚生: これは、国際的な労働力の多様なニーズを満たすために設計された賃金以外のインセンティブです。グローバル福利厚生には、有給休暇、民間健康保険、企業年金、リモートワーク手当などが含まれます。グローバル福利厚生を導入することは、人材を惹きつけ、国境を越えたチームを団結させるための鍵となります。
ケーススタディ:複雑なカーブアウトの管理
- 背景と課題:ある工業製品会社が、9カ国にまたがるサポート・スタッフを含む資産を大手企業から買収しました。クライアントは、事業法人の設立と3カ国で働く75人の異動管理という課題に直面しました。さらに、9カ国にまたがる14人の従業員が宙ぶらりんの状態に置かれ、新たな雇用体系への移行が必要となりました。
- 解決策:GoGlobalはGAP分析を実施し、給与、福利厚生、契約を評価し、宙に浮いた従業員のEORサービスへの移行を指導いたしました。国や人数にもよりますが、これはクライアントが独自の事業体を設立するまでの一時的なソリューションとなりました。
- 結果:すべての人材が100%の定着率で異動に成功しました。当社の積極的なアプローチにより、ビザや退職金に関する特別な配慮のもと、契約は開始日の2週間前に締結されました。
計画とサポートが鍵
M&Aのカーブアウト取引は時間が非常に重要ですが、綿密な計画と適切なサポートがあれば、会社は複雑な人材移動を乗り切ることができます。
包括的なM&Aライフサイクル・サポートを活用することで、自社の事業を守りつつ、移籍した人材の価値を最大化するカーブアウトを成功させることができます。
当社のM&Aソリューション・チームがお客様の事業成長戦略をサポートします。お気軽にお問い合わせください。
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