英国における法人設立と運営のすべて

英国は、今なお世界有数のビジネスフレンドリーな国であり、その魅力はデータにも現れています。現在、英国で法人登録されている企業数は過去最多を記録しており、投資と成長に向けた強い勢いが続いています。
その背景には明確なトレンドがあります。英国はグローバル・イノベーション・インデックスで常に世界トップ5にランクインしており、また国際通貨基金(IMF)によると外国直接投資(FDI)の受け入れ額でも上位5か国に数えられています。さらに、国内には550万社以上の企業が存在し、その99.8%が中小企業です。
これは単なる統計ではありません。海外企業が英国に進出する動きが加速しており、その目的は、高い技術力、人材の豊富さ、グローバルな接続性を活かすことにあります。
本ブログでは、英国でビジネスを始めるにあたって必要な知識をわかりやすく整理しています。法人形態の選定から、設立手続き、運営におけるコンプライアンス対応まで、成功に向けたステップをご紹介します。
英国の法人形態:目的に応じて最適な形を選ぶ
英国では、さまざまなビジネス形態から選ぶことができます。以下は代表的な法人形態とその特徴です。
形態 | 特徴 |
---|---|
有限責任会社(Ltd) | 独立した法人格、株主の責任は限定、設立が迅速で一般的な選択肢です。 |
個人事業主(Sole Trader) | 設立が簡単、全て自己責任、成長余地には制限があります。 |
パートナーシップ(Partnership) | 共同出資・責任共有、コンプライアンス負担は少ないといえます。 |
有限責任事業組合(LLP) | 柔軟性+責任限定、プロフェッショナルサービス業に好まれます。 |
事業を始める前に、適切な事業形態を選択することが重要です。それぞれの形態には、法的、税務的、そして運営上のそれぞれの違いがあり、柔軟性の高いものもあれば、より保護的なものもあります。次のセクションでは、利用可能な事業形態とその比較について詳しく見ていきます。
有限責任会社(Ltd):海外企業に最も選ばれる形態
最も一般的な法人形態で、以下の特徴があります。
- 株主の責任は出資額に限定
- 株主1名・取締役1名で設立可能
- 通常、24時間以内に設立完了
独立した法人格のため、税務面の柔軟性や資金調達のしやすさが魅力です。
個人事業主(Sole Trader):シンプルさ重視の選択肢
- 収益が出始めたら翌会計年度の10月5日までに英国歳入関税庁 (HMRC)に登録が必要
- 法人格がないため、負債もすべて個人の責任
- 設立・運営コストが低く、報告義務も最小限
手軽に始められる反面、事業の成長・資金調達・人材雇用に制約があり、慎重な判断が求められます。
有限責任事業組合(LLP):共同事業向き
- 各パートナーに有限責任が付与され、安心
- 法人税ではなく個人課税(利益はパートナーに直接分配)
- 柔軟な内部構造と、比較的シンプルな設立・運営が可能
設立手続き:明確かつスピーディ
英国での法人設立はシンプルですが、いくつかの要件があります:
- 会社名の決定(他社と重複不可)
- 法人形態の選定(Ltd/LLP/Sole Traderなど)
- 英国内の住所(バーチャルオフィス可、私書箱は不可)
- 取締役の任命(1名以上、コーポレートセクレタリーは任意)
- 株式構成の定義
- 重要な支配者(PSC/UBO)の情報開示
- 定款(Memorandum + Articles of Association)の準備
- Companies Houseへの法人登記
- 登記完了後、「設立証明書(Certificate of Incorporation)」が発行
多くの手続きはオンラインで1時間以内に完了可能です。設立完了後、すぐにビジネスを開始できます。
設立後のコンプライアンス:始まりにすぎない
英国では会社設立は簡単ですが、その後の運営には継続的な法令遵守が求められます。特に以下の義務があります。
- 年次確認報告書(Confirmation Statement)
- 財務諸表の提出(Companies House)
- 法人税申告(HMRC)
- 年間売上が£90,000以上の場合はVAT登録が必要
さらに、2025年以降は取締役の本人確認が義務化されており、監督体制が一層厳格になります。
海外投資家が注意すべきポイント
項目 | 内容 |
---|---|
居住地 | 株主・取締役ともに英国居住は不要 |
登記住所 | 英国内の物理住所(公開情報)必須 |
本人確認 | 外国籍の取締役は、パスポートや公共料金請求書などの提出が必要 |
銀行口座 | 英国のビジネス口座が必須(マネーロンダリング審査あり) |
ビザ | 株主には不要だが、現地経営にはビザが必要な場合も |
PSC/UBO開示 | 所有者情報の透明性を確保するための開示義務あり |
特に銀行口座の開設や本人確認書類の準備には注意が必要で、現地知識やサポートがないとスムーズに進まないことがあります。
英国での法人設立はスムーズ しかし油断は禁物
英国では、法人の設立手続き自体は非常にシンプルで、スピーディに完了します。しかし、その「簡単なスタート」、必ずしも「簡単な道のり」を意味するわけではありません。
2025年半ばからの制度改正により、コンプライアンスの水準が大きく引き上げられています。Companies House(会社登記局)には新たな権限が付与され、取締役の本人確認が義務化されるなど、規制の強化と監督体制の厳格化が進んでいます。
これらの改革は、ビジネスの透明性・安全性を高める一方で、一つのミスが大きなリスクに繋がる環境も生まれています。
法人形態の選定から、VAT(付加価値税)のしきい値の把握、銀行口座の開設、年次報告書の提出に至るまで、すべての判断が将来の運営に波及する影響を持ちます。
これまで私たちは、ほんの些細な手続き上のミスが、グローバル企業の進出スケジュールや信頼性を大きく損なった事例を数多く見てきました。現地の知識と実務サポートがあれば、防げる問題ばかりです。
英国での成功には、登記書類をそろえるだけでは不十分です。サステナビリティ(持続性)、レピュテーション(信頼)、スケーラビリティ(成長性)を見据えた準備こそが不可欠です。
経験豊富なグローバルビジネス・ソリューションパートナーであれば、英国の制度・文化に根ざしたノウハウと、長期視点のサポートにより、複雑なプロセスを一貫してサポートできます。
英国でのビジネス成功は、ただ現地に法人を置くことではなく、準備万端で進出することにあります。
正しい体制を整え、信頼できるパートナーと連携すれば、英国市場での成長も、自信を持って加速させることができます。
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