モロッコ:ヨーロッパと北アフリカへの玄関口

北アフリカに地域拠点を築くなら、モロッコはぜひ検討すべき国です。
地理的にも商業的にも、ヨーロッパ・アフリカ・中東が交わる場所。政治的安定、近代的なインフラ、そして輸出を前提とした製造業が整っています。
米国の U.S. News & World Report では、モロッコは世界で最もビジネスに適した国の一つとしてランクイン。The Heritage Foundation は、同国を北アフリカで最も自由な経済と評価しています。この地域の上場企業トップ6社は、すべてモロッコ企業です。
これらの評価は偶然ではありません。数十年にわたる戦略的投資と計画の成果です。モロッコは、インセンティブ、人材、物流を備えた、地域成長のための跳躍台としての地位を築いてきました。
本ブログでは、モロッコが際立つ理由と、国際企業が拠点を設立・拡大する際に押さえておくべきポイントをご紹介します。
世界へつながる産業拠点
モロッコは、自動車、航空宇宙、繊維、電子機器といった主要産業において、“産業大国”としての地位を確立しています。
多国籍企業がモロッコを選ぶ理由は以下の通りです。
- 競争力のある労働コスト
- 60カ国以上との自由貿易協定
- 輸出に最適化された物流インフラ
特にタンジェMED港は、アフリカ最大のコンテナ港であり、世界でもトップ25に入る規模。モロッコの工場から主要市場へ、迅速かつ効率的に大量輸送が可能です。
実利あるフリーゾーン
タンジェ・フリーゾーン(TFZ)は、モロッコの大きな魅力のひとつです。ここで事業を行う企業は、以下の恩恵を受けられます。
- 5年間の法人税免除
- 免除期間終了後も15%の低税率
- 輸出入関税なし
- 利益の全額送金可能(特定の送金は為替管理局の事前承認が必要)
単なる優遇制度ではなく、実際にインフラ、人材、グローバルなサプライチェーン接続を備えた成長基盤です。
競争力ある税制環境
モロッコの税制は輸出企業に有利で、長期的な事業展開を後押しします。
- 輸出企業:法人税17.5%
- 標準税率:31%
- フリーゾーン:5年間免税、その後15%
- 一部株式譲渡益に対するキャピタルゲイン課税なし
- 配当の源泉徴収税10%(条約で軽減される場合あり)
- 特定業種では設備輸入に対する関税・VAT免除
地域内の他国と比べても、税負担の軽さと条約ネットワークの広さは際立っています。
最適な法人形態の選択
一般的な設立形態はSARL(有限責任会社)で、中小企業から多国籍企業の子会社まで幅広く対応可能です。
製造、輸出、大規模採用を予定している場合は、フリーゾーンか本土法人かを事前に検討しましょう。それぞれに税制、コンプライアンス、人材採用の面で異なる要件があります。
モロッコにおける設立期間と現地要件
モロッコで法人を設立するには一定の期間が必要ですが、その所要時間は以下の要因によって大きく異なります。
- 法人形態の種類
- 所在地(フリーゾーンか本土か)
- 書類の準備状況
- 規制当局の承認状況
- 任命されたマネージャーのスケジュール
任命されたマネージャーが、一部の手続きを完了するためにモロッコへ渡航する必要がある場合、手続き期間はさらに延びる可能性があります。特に渡航や書類準備に遅れが生じた場合、3か月を超えることもあります。
設立に必要な主な手続き
モロッコでの法人設立には、現地マネージャーの任命に加えて、以下のような複数の事務手続きを完了する必要があります。
- 書類の公証
- 商業裁判所への登録
- 社会保障機関(CNSS: Caisse Nationale de Sécurité Sociale)への登録
- 税務番号(Tax ID)の取得と銀行口座の開設
現地制度に精通したパートナーと協力すれば、スムーズかつ迅速に進めることができます。一方、経験や知識が不足している場合は、数か月単位の遅延につながることもあります。
モロッコでの採用:押さえておくべきポイント
モロッコには若く、多言語対応が可能な人材が豊富にいます。多くの人がアラビア語とフランス語を話し、特にテクノロジーやサービス分野では英語の習熟度も急速に高まっています。
現地での採用には、労働法の理解が不可欠です。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 勤続2年で勤続手当(シニオリティボーナス)が支給されます
- 勤続年数に応じてボーナスは増加し、最大で勤続25年時に25%まで上がります
- 解雇には厳格な手続きが必要で、聴聞や書面での記録が求められます
- 差別を理由とした解雇は禁止されています
- 多くの従業員は無期雇用契約で雇用されています
また、社会保障への拠出は雇用主・従業員双方に義務があります。主な項目は以下の通りです。
- 家族手当
- 医療保障
- 年金
- 教育・研修基金
- 高所得者や利益に対する連帯税
雇用主はCNSS(Caisse Nationale de Sécurité Sociale)への登録と毎月の拠出申告が必要です。ここでの手続きミスはコスト増や監査リスクにつながるため、正確な管理が求められます。
データ保護とコンプライアンス
モロッコでは、個人データ保護法(Law n° 09-08)に基づき、個人情報の保護が厳格に運用されています。監督機関は国家個人情報保護委員会(CNDP)です。
この法律は、EUの一般データ保護規則(GDPR)と高い整合性を持っており、欧州のパートナーや顧客と取引する企業にとっても安心です。
従業員データや顧客情報、オンライン取引を扱う場合、モロッコでのデータ保護遵守は必須事項です。違反は法的リスクや信用リスクにつながるため、無視できません。
現地の専門知識を活かして、スケーラブルな体制を構築する
モロッコはビジネスにフレンドリーな環境ですが、事業拡大には法務・運営・文化面での複雑さが伴います。海外雇用代行サービス(EOR)での参入であれ、正式な法人設立であれ、現地の専門知識は不可欠です。
適切なパートナーがいれば、次のようなサポートを受けられます。
- 最適な法人形態と税務構造の選択
- 労働法、HRポリシー、コンプライアンスのスケジュール管理
- スムーズな給与計算とグローバル福利厚生の運営
- 越境税務と利益送金の最適化
- 北アフリカ、ヨーロッパ、その他地域への効率的な拡大
モロッコは、単なる拠点ではなく「成長の足がかり」と言えます。適切な構造、優秀なチーム、信頼できる支援体制があれば、この地は地域全体での長期的な成長を支える発射台となります。
最初の一歩を賢く踏み出し、自信を持って拡大へ。
現地に精通したパートナーとともに、次のステージへ進みましょう。
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