UAEとサウジアラビア:中東ビジネス拠点の選定に関する主要な疑問にお答えします

中東地域では現在、ビジネスの大きな変革が進行しており、その中でもアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアは、国際的なビジネス展開における主要な進出先として注目を集めています。しかし、貴社にとって最適な市場はどちらなのでしょうか。
先日開催された「Ask Me Anything」セッションでは、GoGlobalの中東地域における法人マネジメントのシニアマネージャーであるPatricia Tanが登壇し、UAEとサウジアラビアを地域拠点として検討する際に、国際企業が最も関心を寄せている疑問にお答えしました。
UAEとサウジアラビアの戦略的な違いとは?
どちらが優れているかという話ではなく、貴社のビジネス目標にどちらが適しているかが重要です。
UAEは、柔軟性、スピード、そして中東地域全体への広いリーチを提供します。一方で、サウジアラビアは中東最大の国内市場へのアクセスに加え、政府による手厚い支援が特徴です。
迅速な設立手続き、シンプルな事業運営、そして中東・アフリカ市場へのゲートウェイとしての機能を重視するのであれば、特にフリーゾーンを活用することで、UAEは非常に有力な選択肢となります。
一方、サウジアラビアは急速な変革の真っただ中にあります。「Vision 2030」は単なるスローガンではなく、実際に世界中からの投資を呼び込み、製造業、エネルギー、観光、テクノロジーといった主要分野において明確な政府方針が示されています。サウジアラビアは法規制がやや複雑な市場ではありますが、同国の成長戦略と方向性に合致していれば、非常に大きなビジネスチャンスが広がっています。
各国における外国資本による企業所有の仕組みとは?
UAEでは、外国人がビジネスを所有・運営することが非常に容易になっています。2021年以降、メインランドでの多くの事業活動において、現地スポンサーを必要としなくなりました。もともとフリーゾーンでは、100%の外国資本による所有が標準とされており、持分や経営権を共有する必要なく、迅速に法人を設立・運営することが可能です。
サウジアラビアにおいても、100%の外国資本による事業所有は認められていますが、取得にはいくつかのステップが必要です。まず、投資省(MISA)からのライセンス取得が求められます。この申請には、監査済みの財務諸表、事業計画、そして多くの場合、現地での実体(フィジカルプレゼンス)が必要です。良い面としては、プロフェッショナルサービス、IT、製造業など、多くの分野が外資に開放されている点が挙げられます。ただし、エネルギー、防衛、一部の小売業などについては依然として規制があります。
スピードと経営権のコントロールを重視される場合には、UAEの方がよりシンプルでスムーズな選択肢となるでしょう。
設立までの期間はどのくらいかかるのか?
UAEでは、特にフリーゾーンでの設立が非常にスピーディーに進むのが特徴です。フリーゾーンによっては、すべての手続きが3〜10営業日で完了することもあります。メインランドでの設立はやや時間を要し、事業内容や法人形態、書類の準備状況にもよりますが、通常2〜6週間ほどかかります。
一方、サウジアラビアで外国資本100%の法人を設立する場合、一般的には4〜6週間を見込む必要がありますが、場合によってはさらに長引くこともあります。MISA(投資省)のライセンス承認には不確実性が伴うためです。これに対し、現地パートナーと組んでサウジ資本が過半数を占める形での設立を行う場合は、手続きが大幅に早まる傾向にあり、書類がすべて整っていれば最短で2週間程度で完了するケースも見られます。
つまり、設立スピードは会社の構成次第ではありますが、一般的に見ると、スピードと予測可能性の面ではUAEがサウジアラビアを上回っています。
UAEで選べる法人形態とは?どのように選ぶべきか?
UAEでは、主に3つの法人形態から選択することが可能です。メインランド、フリーゾーン、そしてオフショアです。
メインランド法人は、各首長国の経済開発局(Department of Economic Development)によってライセンスが発行されます。この形態では、UAE全土で制限なく事業を展開することが可能です。現地顧客を対象としたビジネスや、政府案件への入札を検討している企業にとって最適な選択肢といえるでしょう。また、ビザの割り当ても比較的柔軟です。
フリーゾーン法人は、100%外国資本による所有が可能で、税制上の優遇措置や設立手続きの簡便さなどから、国際企業に特に人気があります。ただし、メインランドとの直接取引はできず、現地代理店の活用や支店の設立が必要となります。
オフショア法人は、資産の保有や国際投資を目的とした構造であり、UAE国内での事業活動はできません。また、ビザの取得も認められていません。
どの法人形態を選ぶべきかは、貴社の事業運営上の目標によって異なります。現地市場でのプレゼンスを重視する場合はメインランドが適しており、コスト効率・スピード・経営権の確保を優先する場合は、フリーゾーンでの設立から始めるのが現実的な選択肢となります。
それぞれの国で成長している産業分野とは?
UAEでは、プロフェッショナルサービス、テクノロジー、物流、メディアなどの分野が特に活発であり、これらは主に各分野に特化したフリーゾーンによって手厚く支援されています。
例えば:
- テクノロジー企業は、ドバイ・インターネット・シティやアブダビのHub71に集まる傾向があります。
- 金融サービス企業には、コモンローを採用しているドバイ国際金融センター(DIFC)やアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)が人気です。
- 物流業界は、ジュベル・アリ・フリーゾーン(Jafza)やラス・アル・ハイマ経済ゾーンの恩恵を受けています。
- メディアおよびクリエイティブ産業では、ドバイ・メディア・シティやアブダビのtwofour54が主要な拠点として選ばれています。
一方、サウジアラビアでは、建設、製造業、エネルギー、観光、消費財といった分野で急速な成長が見られます。Neom、Red Sea Global、Qiddiyaなどの国家規模のプロジェクトには、世界中から企業が参入しています。政府は、税制優遇、各種インセンティブ、インフラ整備などを通じて積極的に支援を行っていますが、進出企業に対しては、現地化と長期的な投資姿勢が求められます。
採用や人材の移動に関して知っておくべきポイントは?
UAEとサウジアラビアは、それぞれ独自の入国管理および労働制度を採用しており、両国間で人材を移動させることは自動的に行えるものではなく、決して容易ではありません。
新しい市場を試験的に開拓する段階であれば、「EOR(Employer of Record)」モデルの活用が有効です。この仕組みを利用すれば、法人を設立することなく、現地で従業員を雇用することが可能です。一方で、人材を恒久的に異動させる場合には、一方の国での適切な退職手続きと、もう一方の国での正式な採用手続きを確実に行う必要があります。これを怠ると、コンプライアンス上の問題が発生するリスクがあります。
また、雇用契約の形式、福利厚生、労働者保護に関しても両国には明確な違いがあり、簡略化できる部分はほとんどありません。ビザの遅延、福利厚生の未整備、雇用区分の誤りなどが発生すると、両国いずれにおいても深刻な問題につながる可能性があります。
このような理由から、UAE・サウジアラビアいずれの市場においても、人材戦略は初期段階から現地の法的専門家のサポートを受けながら慎重に計画を立てることが極めて重要です。
投資家ビザの取得機会は両国でどう異なるのか?
投資家ビザに関しては、UAEの方がより効率的なプロセスが整っています。通常、株主向けのスタンダードな投資家ビザは、1〜2週間程度で発給されるのが一般的です。また、条件を満たす投資家に対しては、長期滞在が可能な「ゴールデンビザ」も用意されており、取得には多少時間を要するものの、最大10年間の居住許可が付与されます。
一方、サウジアラビアでは、プロセス全体により多くの時間と手続きが必要です。投資家ビザはMISA(投資省)のライセンスに紐づいており、ビジネスプラン、監査済みの財務諸表、場合によっては資本コミットメントなど、詳細な書類の提出が求められます。取得は可能ですが、UAEと比べると手続きの複雑さや所要時間は増すと考えておくべきです。
迅速かつ効率的に人材を移動させたい場合、実務的にはUAEの方がより適した選択肢となるでしょう。
両国を選ぶ際の最重要ポイントとは?
今後3〜5年間のビジネスの優先事項を見極めることが、どちらの国が貴社に適しているかを判断するうえで大きな指針となります。
迅速に動き、市場を試験的に開拓したり、地域拠点を構築したりしたい場合は、UAEが理想的です。インフラは整っており、規制も明確で、最短で1週間程度で設立し、即時に事業を開始できます。
一方、地域最大の経済圏であるサウジアラビアへの長期的な投資を計画し、現地化とコミットメントを厭わないのであれば、同国は非常に魅力的な市場です。ただし、短期的な視点ではなく、深い根ざしを重視する企業に適しています。
中には、両国を組み合わせて展開する企業もあります。まずUAEでスピーディに事業を開始し、その後、規模拡大に伴ってサウジアラビアでのプレゼンスを築くケースです。
いずれの場合も、専門知識なしに単独でこれらの市場に進出することは避けるべきです。成功の鍵は、現地の状況や書類手続き、規制の裏に潜むリスクを熟知したパートナーと連携することにあります。
中東での戦略は、今ここから始まります
中東は「コピペ」できる市場ではありません。UAEとサウジアラビアは、まったく異なる市場であり、それぞれ独自のルール、スピード、期待値を持っています。
しかし、両国ともビジネスに門戸を開いており、本物のチャンスを提供しています。そして何よりも重要なのは、両国ともに、設立のための地道で面倒な必要作業を正しく実行できる企業に対してこそ、その価値を還元するという点です。ここに成功の差が生まれます。
成功は、単なる憶測やネット検索からは生まれません。現地の事情に詳しく、言葉を理解し、実際に物事がどう進むかを知る人々と共に進めることが不可欠です。現地の人脈、最新の規制情報を持ち、計画を狂わせる前に問題を察知できるパートナーが必要です。
統合的なアプローチが重要です。適切なパートナーは、UAEとサウジアラビアのどちらかを選ぶ手助けをするだけでなく、EOR(Employer of Record)による小規模なスタートから、法人設立、HRサポート、税務、給与支払いや決済業務まで、事業の成長に合わせたスケールアップを支援します。初めての採用から地域本社設立まで、適切なパートナーシップが時間・コスト・コンプライアンスリスクの削減につながります。
この地域での成長を目指すなら、最初の一歩から信頼できるチームを味方につけましょう。
中東展開戦略をさらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問合せください。
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