法人設立の5ステップ:グローバル展開を成功させるための戦略ガイド

市場の可能性を、実際の事業として長く続く形にするためには何が必要でしょうか。
国を越えて事業を展開する企業にとって、多くの場合「法人設立」から始まります。
法人設立は、ただの書類作成ではありません。グローバルなビジョンを、現地で実際に動くビジネスへと変えていくための重要なプロセスです。正しく進めれば、安定性・コンプライアンス・信用力を築く基盤になります。誤れば、成長のスタート段階で足踏みする原因にもなり得ます。
国や業界が異なっても、共通して見られるパターンがあります。詳細こそ違えど、核心となるステージはほとんど同じです。
本ブログでは、グローバル展開を実現するうえで欠かせない5つの主要ステップに整理してご紹介します。どの国でも応用できる、実践的かつ戦略的なアプローチを組み立てるためのヒントが目的です。
ここで紹介する内容は、一般的な経験に基づく平均的なステップです。実際の要件は、進出先の国・業界・企業の状況によって大きく異なる可能性があります。
現実的な判断:今、法人設立は本当に必要か?
動き出す前に自問してみてください。
「今がそのタイミングなのか? それともまだテスト段階なのか?」
次のような状況にある場合、法人設立を検討すべきタイミングかもしれません。
- 現地に10名以上の従業員がいる、または今後12か月以内にその見込みがある
- 過去6か月以上、安定した現地収益を上げている
- 主要な取引先から、現地法人との契約を求められている
- 現地で契約締結、オフィス賃貸、ライセンス取得、資産保有が必要になっている
- EOR(Employer of Record)モデルの利用コストが、法人運営コストを上回り始めている
国ごとの検討ポイント
EORから自社法人への切り替えは、市場によって損益分岐点が異なります。以下は一例です。
- シンガポール:従業員数が約5〜8名、売上が60万シンガポールドル以上
- ドイツ:従業員数約6〜10名、売上40万ユーロ以上
- 米国:通常、従業員10〜15名、売上80万米ドル以上
- 英国:従業員8〜12名、売上50万ポンド以上
これらは法的な基準ではなく、EORを継続するか法人設立に移行するかを判断するための “コスト面での目安” です。
あわせて検討すべき重要な質問
- 今後2年以上の長期的な現地プレゼンスが必要か?
- タイムラインや、継続的な運営コスト(税務・会計・法務など)は適切か?
- 現地での給与計算・税務・コンプライアンス管理を社内で担える体制があるか?
- 現地での事業規模が、法人化に伴う管理コストに見合っているか?
プロのヒント:
従業員が10名未満、進出から12か月未満の場合は、EOR を継続した方が合理的なケースが多いです。法人設立は “長期的なコミットメント” に対する投資であることを前提に検討する必要があります。
リスク軽減:避けるべき代表的な落とし穴
以下は、法人設立プロセスで最も頻繁に発生するリスクと、その回避策です。
銀行口座開設のタイムラインを甘く見積もること
リスク: 銀行口座が開設できないと、従業員給与や取引先への支払いができない。
回避策: すぐに銀行手続きを開始する。必要に応じて、EOR を一時的に活用するなど代替手段を検討。
現地取締役体制の不十分な構築
リスク: 名義貸しのような形で取締役を置くと、ガバナンス上の問題や責任の空白が生じる。
回避策: 現地取締役が法的義務を理解していることを確認し、定期的なコミュニケーションを行う。
必要書類の準備不足
リスク: 書類の差し戻しや追加提出が続き、設立が遅延する。
回避策: 各国特有の要件を熟知したパートナーと連携し、必要書類を事前に揃えておく。
スケジュール調整の不備
リスク: システム統合作業や従業員の入社日、クライアント対応のスケジュールにずれが生じる。
回避策: 依存関係と余裕期間を含む詳細なプロジェクト計画を策定する。
規制要件の見落とし
リスク: 必要なライセンスや登録を欠いたまま事業を行うと、罰金や事業停止のリスクが発生。
回避策: 国や業界に合った包括的なコンプライアンスチェックリストを作成する。
5つのステップ:計画から事業運営へ
リスクを把握したら、次は道筋を描く段階です。
国や企業によって状況はさまざまですが、事業が実際に動く「機能する法人」をつくるまでの流れは、概ね同じ5つのステップに沿っています。
ここでは、そのプロセスがどのように進むのか、そして各ステージで適切な専門知識がどのように物事をスムーズに進めるのかについて解説します。

Step 1: 戦略的プランニングと最適な法人形態の選択
すべての成功する法人設立は、「目的の明確化」から始まります。
選択する法人形態(子会社、支店、駐在員事務所など)は、事業運営の方法、税務処理、市場からの見られ方に影響します。
よくあるリスク:
誤った法人形態を選ぶと、後から税務リスクや各種規制の問題が発生する可能性があります。
専門家が役立つ理由:
現地のアドバイザーが複数のシナリオをシミュレーションし、長期的な事業戦略と運用ニーズに最適な法人形態を提案します。
Step 2: 法的基盤の整備と法人登録
この段階では、計画を「法的な存在」として具現化します。必要書類の準備・提出、取締役の選任、各国固有のガバナンス要件への対応が含まれます。
よくあるリスク:
書類が現地基準を満たしていなかったり、翻訳・認証プロセスを見落としていたりすると、提出の遅延につながります。
専門家が役立つ理由:
経験豊富なパートナーは国ごとの要件を把握しており、提出を効率よく進め、初日から完全準拠の状態を確保します。
Step 3: 税務・法定登録のセットアップ
法人が設立されたら、事業開始前に税務、社会保険、その他の法定義務への登録を完了する必要があります。
よくあるリスク:
「法人設立=すぐに事業開始できる」と誤解するケースがあります。しかし実際には、すべての登録が完了するまで、従業員を雇用したり給与を支払ったりすることはできません。
専門家が役立つ理由:
現地チームが各行政機関への申請の順序を最適化し、すべての登録を適切に完了させることで、高額な遅延を回避できます。
Step 4: 銀行口座開設と財務基盤の構築
銀行関連の手続きは、プロセスの中でも最も予測が難しい部分です。
現地口座がなければ、従業員や取引先への支払いができず、実質的に事業が停止してしまいます。
よくあるリスク:
銀行規制は国によって大きく異なり、マネーロンダリング対策(AML)や本人確認(KYC)の審査により、予想以上に時間がかかることがあります。
専門家が役立つ理由:
銀行とのやり取りを早期に開始し、現地のネットワークを活用することで、オンボーディングを迅速化し、必要に応じて暫定的な対応策を検討できます。
Step 5: 事業運営の開始と継続的なコンプライアンス対応
法人設立と銀行口座の開設が完了したら、次は事業を動かすための仕組みづくりです。人事、給与、会計、コンプライアンスなどの運用体制を整備します。
よくあるリスク:
継続的なコンプライアンスに必要な作業量を過小評価し、提出漏れや従業員リスク、監査対応の問題につながることがあります。
専門家が役立つ理由:
統合的なコンプライアンス体制により、給与計算、税務申告、ガバナンス義務が確実に遂行されます。企業は適正な状態を保ちつつ、成長に集中できます。
グローバル展開の最終ステージへ
国際的に事業を広げることは「ビジョン」「タイミング」「精度」が交差するストーリーです。
アイデア段階から実際の事業運営が可能な法人として立ち上がるまでの道のりは決して単純ではありません。各国固有の規制、多様なステークホルダー、複雑なタイムラインを乗り越える必要があります。
スムーズな実行と高額な遅延を分けるもの、それは“準備”です。
プロセスを理解し、起こりうる障害を予測し、適切な専門家を配置することで、常に一歩先を行くことができます。
海外雇用代行サービス(EOR)からの移行でも、初の海外法人設立でも、新規マーケットへの参入でも、綿密な計画こそが最大の武器になります。
法人設立は単なるコンプライアンス対応ではありません。それは「コントロール」「信頼性」「成長」への道です。しっかりと準備することで、以下が可能になります。
- 自信を持って採用判断ができる
- 契約締結の遅延を防げる
- 給与や財務をスムーズに管理できる
- 複数国でのコンプライアンスを維持できる
グローバル展開は「完了させる」ことが目的ではありません。「正しく実行する」ことが重要です。成功する企業は、複雑さを障壁ではなく“戦略的チャンス”と捉えています。
明確な計画と適切なパートナー、そして確かなロードマップがあれば、混乱はオペレーショナルな強みに変わります。あなたのビジョンは、確かな成果へと進化します。
GoGlobalのグローバルソリューションが貴社のビジネス成長をサポートいたします。
お気軽にお問い合わせください。
本ブログで提供する内容は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言と見なすべきものではありません。今後規制が変更されることがあり、情報が古くなる可能性があります。
