国別海外展開ガイド連載第4回:ベトナム実務編 法人設立・税制・現地採用の深掘り【2026年版】

はじめに
連載第3回「ベトナム進出入門」では、ベトナムの魅力と進出の選択肢を整理しました。本ブログでは、実際に進出を進める段階で必要になる実務情報を解説します。
【法人設立】現地法人設立の実務
ベトナムの外資系法人の形態として最も一般的なのが「100%外資有限責任会社(100% FOE LLC)」です。設立プロセスを整理します。
設立の主要ステップ:
- 投資登録証明書(IRC)取得:1〜2ヶ月
- 企業登録証明書(ERC)取得:IRC取得後1〜2週間
- 印鑑登録・銀行口座開設:ERC取得後1〜2週間
- 税務登録・社会保険登録:並行して実施
- 業種別許認可の取得:業種により異なる(例:教育、金融、不動産など)
| 最低資本金と外資規制 ・最低資本金:業種により異なる(WTO約束表に基づく) ・外資規制:小売、物流、教育、金融、通信、不動産など複数業種で規制あり ・事前にベトナム弁護士・コンサルタントによる業種別デューデリジェンスが必須 業種によっては、合弁形式でしか進出できない場合があります。 |
【税制】法人税・VAT・個人所得税
法人税
標準税率は20%。特定業種・地域には優遇税率(10%、17%など)や免税期間が適用されるケースがあります。経済特区(EZ)・工業団地での税制優遇は、製造業進出時の重要な検討ポイントです。
VAT(付加価値税)
標準税率は10%(2026年)。輸出企業は0%適用、特定物品・サービスには5%または免税あり。VAT還付の実務が煩雑なため、専門家のサポートが重要です。
個人所得税
累進課税で最高税率35%。外国人居住者(183日以上滞在)は全世界所得が課税対象となります。駐在員の税務計画では、居住者/非居住者の判定が重要論点になります。
社会保険(SI/HI/UI)
ベトナム国民の雇用には、社会保険(SI)17.5%、健康保険(HI)3%、失業保険(UI)1%の雇用主負担が必要(計21.5%)。外国人雇用も、Work Permit保有者はSIとHIが対象になります(2018年の規制改正)。
【現地採用】給与水準の目安(2026年、ホーチミン・ハノイ)
| 職種 | 月額給与(USD) | 年収(円換算) |
| カントリーマネージャー | $5,000〜10,000 | 約900万〜1,800万円 |
| セールスマネージャー | $2,500〜4,500 | 約450万〜810万円 |
| シニアエンジニア | $2,500〜4,500 | 約450万〜810万円 |
| ミドルエンジニア | $1,500〜2,500 | 約270万〜450万円 |
| 経理・管理スタッフ | $800〜1,500 | 約145万〜270万円 |
| 工場オペレーター | $300〜500 | 約54万〜90万円 |
※1USD=150円で換算。ホーチミンの方がハノイより給与水準が10〜20%高い傾向。IT人材は年10〜15%ペースで上昇中です。
【落とし穴】ベトナム進出でよくある失敗
1. Work Permit取得の準備不足
大卒以上の学歴証明・無犯罪証明の取得に2〜3ヶ月かかります。駐在員派遣計画は、Work Permit取得期間を織り込んで組む必要があります。
2. 労働法の厳格さを軽視
ベトナムの労働法は従業員保護が強く、解雇規制が厳格です。「日本の感覚で」解雇して訴訟になり、数ヶ月分の賃金補償を命じられるケースが発生しています。
3. IT人材の離職率
ベトナムIT人材の年間離職率は20〜30%。「採用したら安心」ではなく、継続的なリテンション施策(給与改定、キャリアパス、研修機会)が必須です。
4. VAT還付の遅延
輸出企業にとって重要なVAT還付が、実務上数ヶ月〜1年遅延するケースがあります。キャッシュフロー計画に織り込む必要があります。
まとめ
ベトナム進出は、成長性・コスト優位・人材の宝庫という大きなメリットがある一方、法人設立・労働法・税務の実務ハードルが高い国です。初期段階ではEORで素早く稼働し、BCS(海外バックオフィス業務代行)で複雑なコンプライアンス業務を外注する組み合わせが、進出成功の実務的な解になります。
次回(連載第5回)からは、インド進出のガイドをお届けします。14億人の巨大市場、世界最大級のエンジニア人材プールを持つインド市場を、入門編と実務編の2回に分けて解説します。
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連載:国別海外展開ガイド
本ブログは連載「国別海外展開ガイド」シリーズの一部です。他のブログもぜひご覧ください。
連載第1回:シンガポール進出入門
連載第2回:シンガポール実務編
連載第3回:ベトナム進出入門
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