法人管理のすべて:マルタ

マルタは小さな国かもしれませんが、国際ビジネス界におけるその存在感はますます無視できないものになっています。最近の発表では、外国直接投資が20%増加したことが明らかになり、世界中の企業がこの地中海のハブに注目していることがうかがえます。
しかし、これは単なるPRではありません。マルタは実際にビジネス環境を積極的に変革しているのです。デジタルを最優先にし、税制面でも賢く、コンプライアンスへの対応にも非常に注力しています。
では、これらの特徴は貴社にとって何を意味するのでしょうか?
もし貴社がグローバルなビジネス展開を拡大したい、あるいはヨーロッパ全域での業務を効率化したいと考えているなら、マルタは選択肢の一つとして真剣に検討する価値があります。
このブログでは、企業設立にまつわる複雑さを解きほぐし、必要な手続きや最新の変更点をわかりやすく解説していきます。
なぜマルタなのか?
はっきり言っておきましょう。マルタは、日差しのあるタックスヘイブンというだけではありません。確かに、魅力的で効率的な税制を提供しています(この点については後ほど詳しくご紹介します)。しかし、マルタを際立たせているのは、規制面での柔軟性と、EU(欧州連合)との深い統合の組み合わせです。
あなたは、EU単一市場へのスムーズなアクセス、英語を話す人材、ビジネスに積極的な政府、そしてヨーロッパで最も迅速な法人設立プロセスのひとつを得ることができます。
設立手続きの多くはデジタルで進められますが、「顧客確認(KYC)」や「マネーロンダリング防止(AML)」といったコンプライアンスチェックのために、身分証明書の認証付き書類が必要になることがあります。
これは、創業者の国籍や事業活動の内容によって異なります。
デジタル化された手続きは助けになりますが、正しく物事を進めるためには現地の専門知識が鍵となります。特にコンプライアンスが関わる場合には、それが重要です。
法人形態:マルタで選べる選択肢
どの法人形態を選ぶかによって、求められるコンプライアンスの範囲が決まります。以下に主要な選択肢をまとめました。
法人形態 | 最適な対象 | 主な特徴 |
---|---|---|
有限責任会社(Private Limited Company) | 多くの国際企業 | 最低1名の株主/取締役、資本金1,165ユーロ、有限責任 |
公開有限会社(Public Limited Company) | 大企業や上場企業 | 最低2名の株主/取締役、資本金46,587ユーロ |
パートナーシップ(Partnerships) | ニッチ企業または小規模コンサルタント会社 | リミテッド(有限)またはジェネラル(無限)タイプがあり、どちらも法人格を持つ |
支店(Branch Office) | マルタ市場を試してみたい外国企業 | 別法人ではなく、本社の延長として運営される |
多くの外国企業が「有限責任会社(Private Limited Company)」を選択しています。柔軟性があり、責任の限定が可能で、設立手続きもシンプルだからです。
デジタルを前提とした制度設計:最近のアップデート
マルタは、企業設立プロセスを一新しました。2025年3月以降、すべての会社設立書類はオンラインで提出する必要があります。原本の提出は不要なので宅配便の遅延の心配もありません。必要なのは、スキャンした書類とインターネット接続だけです。
その結果、すべての書類が正確で整っていれば、申請から24時間以内に会社が設立できるようになりました。煩雑な手続きも、官僚的な障害もありません。
この変化は、単なる利便性の向上ではなく、「コントロール性の強化」でもあります。設立プロセスの各ステップを、世界中どこからでもリアルタイムで確認・追跡できるようになったのです。
ステップバイステップ:設立手続きの流れ
マルタの会社設立プロセスは比較的シンプルで迅速、そして(現在は)完全にデジタル化されています。
- 法人形態を選び、会社名を予約する:会社名は一意であり、マルタ企業登記局(MBR)の承認が必要です。「Bank(銀行)」「Insurance(保険)」「Trust(信託)」「Blockchain(ブロックチェーン)」「Crypto(暗号通貨)」「Gaming(ゲーム)」などの用語を含む名前は、特別な規制承認やライセンスが必要になる場合があります。MBRは通常、1営業日以内に名前の使用可否を確認します。手数料を支払えば、名前を3か月間予約することも可能です。すべての名前はラテン文字で表記する必要があります。
- 定款(Memorandum and Articles of Association)の作成:会社の目的、資本金、株主、取締役、登記住所などを含めます。
- 書類をオンラインで提出:株主および取締役の身分証明書、登記住所の証明、デューデリジェンスフォーム、定款を提出します。また、資本金の払込証明も必要です。
- 登録し、納税者番号(TIN)を取得する:登録が完了すると、通常1営業日以内に設立証明書が発行されます。
- 銀行口座を開設し、事業運営を開始する:事業実体(サブスタンス)要件を満たしていることを確認しましょう(詳細は後述します)。
マルタは会社設立を簡素化するために大きく前進しましたが、すべての細かい点を正確にこなすには、やはり時間、計画、そして現地の専門知識が必要です。
税制:ここがポイント
表面的には、マルタの法人税率は35%となっています。ですが、ここからが本題です。マルタでは「完全インピュテーション制度(full imputation system)」が導入されており、株主は還付を受けることができ、実効税率は最小で5%まで下がることもあります。
本当です。ただし、これは抜け道ではありません。マルタの法律に正式に規定された制度であり、EUの規制にも完全に準拠しています。
この還付を受けるには、事業実体(サブスタンス)要件を満たし、毎年監査済みの財務諸表を提出する必要があります。
その他の主な税務ポイントは以下のとおりです。
- 付加価値税(VAT):標準税率は18%です。特定の物品・サービスには軽減税率が適用されます。
- 海運企業:トン数税方式に該当する船舶を所有または運営している認可済みの海運企業は、マルタでの課税が免除されます。
書類から実態へ:継続的なコンプライアンス要件
「サブスタンス(事業実体)」とは、単なる書類上の話ではありません。実際の事業運営がマルタにあることが求められます。税制上の恩恵を受けたいのであれば、本当にマルタで事業を行っている必要があるのです。
設立後に求められる主な事項は以下のとおりです。
- 年次報告書および財務諸表の提出
- 株主および取締役の登記簿の維持
- 政府への最低年次手数料の支払い
- 一般データ保護規則(GDPR)への準拠(情報・データ保護委員会[IDPC]への登録が必要)
- 実体の維持:マルタ国内にオフィスを構え、従業員を雇用し、取締役会もマルタで開催
新しいルール、新たなチャンス:進化するビジネス環境
マルタは最近、単に申請手続きをデジタル化しただけではありません。コンプライアンス体制の多くの側面を強化・刷新しました。以下は最近の主な変更点です。
- 規制監督の強化:マルタ金融サービス庁(MFSA)は現在、すべての業種において「成果重視型監督(Outcomes-Based Supervision)」を採用しています。
金融業や越境サービスを行う場合、これまで以上の監視体制が敷かれると考えておくべきです。 - サステナビリティ報告の開始:2025年より、マルタの大企業および一定条件を満たす外国企業は、EUの「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」に基づき、サステナビリティ指標の報告が義務付けられます。
- 実質的支配者情報の透明性向上:正確な所有者情報の開示が必須となっており、抜け道や盲点は許されません。
マルタ企業登記局(MBR)は、2025年に「最終受益者の透明性に関する国際作業部会フォーラム」を主催し、透明性と国際的な規制整合に対するマルタの強いコミットメントを示しました。 - ノマドに優しく、ビジネスにも適した環境:2024年に、マルタはノマドレジデンス許可制度(Nomad Residence Permits)を改定。リモートワーカーにEUでの拠点を提供しつつ、税制面でも効率的な環境を整備しています。
これにより、複数国で活動するハイブリッドチームにも最適な場所となっています。
最後に:マルタは、本気のビジネス拠点
今やマルタでの法人設立は、ニッチな選択肢ではありません。戦略的な企業にとって、真剣に検討すべき効率的な選択肢となっています。とはいえ、「設立して終わり」ではありません。精度の高い運営と継続的な対応が不可欠です。 そこで重要になるのが、現地の専門知識です。
文化的な期待値を理解し、規制の枠組みを読み解き、ベストプラクティスに合わせて動くには、現場レベルの洞察が必要です。同時に、スケール拡大に対応し、ベンダー管理を統合し、国を越えて一貫したサービスを提供できる、グローバルな視点を持つパートナーも求められます。
法人設立、ディレクター業務、コーポレートセクレタリー業務、人事、税務、会計、国際決済など、必要なすべてをワンストップで提供できるパートナーが、事業の立ち上げだけでなく、持続的な成長のカギとなります。
マルタで、そしてその先へ。
グローバル戦略を実現するには、ローカルでの実行力が欠かせません。両方を提供できるパートナーを、ぜひお選びください。
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