H-1Bビザ申請料が10万ドルに:米国企業の海外人材採用はどう変わる?

米国のH-1Bビザは、長い間、世界中の優秀な人材が活躍するための入り口となってきました。エンジニアや研究者、技術の専門家たちは、このビザを利用してキャリアを築き、多くの業界に変化をもたらしてきました。しかし、最近この制度に大きな変更がありました。
アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領は最近、新規のH-1Bビザ申請に対して10万ドルの申請料を課す大統領令に署名しました。従来の基本申請料780ドルからの大幅な引き上げであり、採用戦略に大きな影響を与えるのは確実です。
現在のビザ保有者や更新申請には影響はありません。しかし、米国内の企業が新たに海外から人材を迎え入れようとする場合、そのコストは大きく増加することになります。
グローバル人材にとっての新たな現実
Amazon、Microsoft、Meta、Apple、Googleといった大手企業は、H-1Bビザ保有者を何万人も雇用しています。これらの企業は、優秀な人材の採用にかかる費用を吸収できるかもしれません。
しかし、成長企業や中堅企業にとっては、新たな障害が立ちはだかっています。H-1B従業員を10人採用するだけで、既存の法務・コンプライアンス費用に加えて、年間100万ドルもの追加コストが発生することになります。
コストの急増に直面し、企業は以下のような取り組みを加速させると予想されています。
- アフリカ、アジア太平洋(APAC)、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ(LATAM)、中東など、テック・エコシステムが成長している低コスト地域への業務のオフショア化
- メキシコなどの近隣国での事業展開や人材採用(ニアショアリング)
- 従業員を移住させることなくプロジェクトを推進できるリモートファースト型のチーム
グローバルな採用戦略、リモートチーム、そして「海外雇用代行(EOR:Employer of Record)」のようなソリューションを取り入れることで、企業はビザや移住の制約を受けずに優秀な人材を確保し続けることが可能になります。
EOR(Employer of Record):戦略的な代替手段
これまで、H-1Bビザのスポンサーになることは、複雑で時間がかかり、費用も高いものでした。法的費用、コンプライアンスの障壁、そして抽選による不確実性はすでに大企業に有利に働いており、急成長中の企業や中堅企業は対応に苦慮してきました。今回の10万ドルの新たな申請料は、それをさらに困難なものにしています。
多くの企業にとって、H-1Bのスポンサーシップはもはや現実的な選択肢ではないかもしれません。
こうした状況の中で注目されているのが、EOR(Employer of Record)ソリューションです。EORを利用すれば、企業は現地法人を設立することなく、国際的な人材を迅速かつコンプライアンスを遵守しながら雇用できます。グローバルなチーム体制を維持し、プロジェクトを継続させ、成長計画を順調に進めるための柔軟でコスト効率の高い方法です。
EORを活用することで、米国企業は以下のようなメリットを得ることができます。
- コスト削減:10万ドルのビザ申請料を完全に回避し、より費用対効果の高い雇用が可能
- 人材の維持:H-1Bスポンサーの対象とされていた職種を、海外において継続させることで業務の中断を回避
- リモートかつグローバルな採用:高額なビザ費用なしに、従業員を母国にとどめたままチームを維持
- コンプライアンスの簡素化:EORが人事、給与、現地の雇用法を管理し、企業は業務に集中可能
- 柔軟性の確保:恒久的な法的インフラを構築せずに、国際的な雇用や異動が可能
EORの導入により、企業はイノベーションと市場拡大を継続できます。米国企業は、変化する政策に縛られることなく、グローバル競争に対応していくことが可能です。
EORが効果を発揮するビジネスユースケース
国際的な事業拡大には、新市場のテストからリモートチームのスケーリングに至るまで、さまざまな課題が伴います。EORソリューションはグローバルな人材採用をシンプルにし、企業が迅速に動き、コンプライアンスを維持し、人材を確保するのを支援します。
以下は、さまざまなビジネスシナリオにおいてEORがどのように活用できるかの例です。
ユースケース | 課題 | EORがどのように支援するか | 事例 |
---|---|---|---|
新市場のテスト | 現地法人なしで外国市場に進出するのは困難 | 現地の人材を迅速に採用し、コンプライアンス、給与、福利厚生を外部で処理 | 米国のITサービス企業がポーランドに進出。EORを通じてマーケティングマネージャーと営業責任者を採用。6か月以内に重要な市場インサイトを収集。 |
Go-to-Market人材の支援 | 現地の専門知識は不可欠だが、長期的なコミットメントが不透明 | 市場の可能性を評価する間、短期間だけ人材を雇用 | 米国のソフトウェア企業がインドに進出。EORを通じて営業担当2名とマーケットマネージャーを採用。迅速でコンプライアンスにも準拠し、リスクが低い。 |
アセット・カーブアウトの管理 | M&Aのカーブアウトにより、従業員が法的雇用主を失う(孤立従業員) | EORが雇用主となり、移行期間中の雇用継続とコンプライアンスを確保 | ヘルステック企業が研究部門を売却。EORが従業員を管理し、新会社が業務を立ち上げるまで生産性と法令順守を維持。 |
急速な事業拡大 | 複数の国で法人を設立するのは時間とコストがかかる | EORが複数国での採用を効率化し、給与、福利厚生、コンプライアンスを管理 | ヘルスケア企業がアジア太平洋地域で事業を拡大。EORを通じてシンガポール、日本、オーストラリアで6か月以内に30名を採用。 |
リモートチームの採用 | リモートワークは国をまたぐが、現地の法令遵守は複雑 | EORが国際的な給与、税金、福利厚生を管理 | 米国のソフトウェア企業がポーランド、ウクライナ、ルーマニアでエンジニアをEOR経由で採用。チームは数週間以内に稼働可能に。 |
岐路に立つ今:今こそ行動を、そして自信を持った採用を
H-1Bビザのコスト上昇とスキルを持った人材の獲得競争の激化により、企業は重要な判断を迫られています。今こそ、優秀な人材を確保し、成長戦略を継続させるための代替手段を模索すべき時です。
H-1Bスポンサーシップのみに依存する企業は、以下のようなリスクに直面する可能性があります。
- 採用コストの増加
- 人材不足
- イノベーションの停滞
- グローバル競争力の低下
EORやリモートファーストの戦略を活用することで、企業は人材パイプラインを多様化し、リスクを軽減し、変化する環境の中で機敏に対応することができます。
EORは単なる応急処置ではなく、国際的な人材採用の未来を担う存在かもしれません。EORを積極的に導入する企業は成長し続ける一方で、H-1Bスポンサーシップだけに頼る企業は後れを取るリスクがあります。
次の政策変更を待って戦略を決める必要はありません。今こそ行動を起こしましょう。グローバルに事業を拡大し、確信を持って人材採用を進め、常に一歩先を行くビジネスを目指しましょう。貴社の次の優秀な人材は、世界のどこかにいます。正しい方法を選べば、その人材が2週間以内にチームに加わることも可能でしょう。
H-1Bビザの懸念なく優秀なグローバル人材を採用する手段として、EORの活用もぜひご検討ください。
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