法人管理のすべて:ポルトガル

ポルトガルが今、注目を集めていることには理由があります。オックスフォード・エコノミクスは最近、ポルトガルをヨーロッパの「優等生」と評し、これまでの財政実績および今後の見通しをその理由として挙げました。ポルトガル銀行(BdP)によると、昨年の海外からの直接投資額は前年比で約20%増加し、実に132億ユーロという驚異的な数値を記録しています。
これは単なる経済成長ではありません。明確なシグナルであり、大胆なアクションを促す呼びかけでもあります。世界中の企業が、ポルトガルがグローバル経済においてますます重要な役割を担っていることに注目しており、現地拠点の設立、優秀な人材の確保、そしてこの活気ある国の明るい未来への投資に積極的に取り組んでいます。
しかし、参入を検討する前に、基礎をしっかりと理解することが不可欠です。ポルトガルで法人を設立するには、正確かつ慎重な手続きが求められます。本ブログでは、ポルトガル市場に自信を持って参入するために知っておくべき基本事項をわかりやすく解説します。
ポルトガルでの法人設立:戦略的な選択
ポルトガルでビジネスを立ち上げる際、まず最初に検討すべき重要なポイントが「法人形態の選択」です。自社の事業目標や運営ニーズに適した法人形態を選ぶことが、成功への第一歩となります。
ポルトガルには、法人設立に関していくつかの選択肢があります。
- Sociedade por Quotas (Lda.):プライベート・リミテッド・カンパニー(有限責任会社)であり、中小企業(SME)に最も人気のある形態です。柔軟性が高く、出資者の責任が出資額に限定される点が特徴です。
- Sociedade Anónima (SA):パブリック・リミテッド・カンパニー(株式会社)であり、規模の大きな企業や株式上場を視野に入れた企業に適しています。
- Empresa em Nome Individual (ENI):個人事業主としての形態で、個人でビジネスを始める起業家に向いています。
- Estabelecimento Individual de Responsabilidade Limitada (EIRL):個人事業主向けの有限責任形態で、事業主個人の責任を限定する保護が提供されます。
多くの国際企業にとっては、Lda.(有限責任会社)が、設立の容易さと法的保護のバランスに優れており、最適な選択肢といえるでしょう。
ポルトガルでLda.(有限責任会社)を設立する:ステップバイステップのガイド
法人形態をLda.に決定したら、いよいよ設立のプロセスが始まります。
ポルトガルでLda.を設立する際には、各ステップが法令遵守のために非常に重要となります。以下に、基本的な手順をご紹介します。
- 会社名の予約:まずは、法人登録機関(Registo Nacional das Pessoas Colectivas – RNPC)を通じて、希望する会社名が使用可能かどうかを確認します。使用可能であれば、選択した名称は3か月間予約することができます。
- 法人銀行口座の開設:最低資本金を預け入れる必要があります。Lda.の最低資本金は法的には1ユーロですが、実務上は5,000ユーロ以上からのスタートが一般的です。この際に発行される預金証明書(Certificate of Deposit)は、後の手続きでも重要な書類となりますので、大切に保管しておきましょう。
- 必要書類の準備:定款の作成、株主および取締役全員の身分証明書類などが含まれます。また、登記上の事務所住所を証明する書類もご用意ください。
- 法人登記の完了:ポルトガルでは、いくつかの方法で法人登記が可能です。「Empresa na Hora」サービスは、即日で会社設立が可能なサービスです。また、「Empresa Online」サービスは、完全オンラインで手続きが完了します。商業登記所での従来の登記も引き続き可能です。
- 納税者番号と社会保障番号の取得:法人税番号(Número de Identificação Fiscal – NIPC)を取得し、該当する事業の場合はVAT(付加価値税)に登録してください。また、従業員の社会保障登録も完了させる必要があります。
- その他の要件の確認:事業内容によっては、地方自治体への登録や、規制対象事業に関する特定のライセンスの取得が必要になる場合があります。最後に、会計システムの整備を行い、財務管理体制を整えることで、スムーズな事業運営が可能になります。
変化し続ける環境:ポルトガルにおける主な規制アップデート
ポルトガルのビジネス環境は、日々進化を続けています。近年の法改正は、インフラの近代化、税制の最適化、そして規制の透明性向上を目的としたものです。
以下は、特に注目すべき主要な変更点です。
- 法人税の変更(2025年):ポルトガルの2025年度予算法では、減税措置が盛り込まれています。法人税率は21%から20%に引き下げられます。中小企業については、課税所得5万ユーロまで16%となります。段階的な引き下げにより、2027年までに15%まで引き下げることを目指しています。
- NHR制度(非居住者向け特別税制)の終了:非居住 (NHR) プログラムは2024年1月1日に終了しました。ただし、以前の納税居住者は、2024~2026年の間に再びポルトガル居住者となる場合は、一部の所得に対し最大50%の税免除が引き続き認められる可能性があります。
- VAT制度の見直し: 2025年の税制改革案では、VAT制度が改革されます。VATグループ制度が導入され、事務負担が軽減されます。また、VATの納付期限が最大12か月に延長されます。
- 銀行規制の改正:最近施行されたポルトガルの銀行業務法は、銀行業務の枠組みを統合し、クロスボーダー取引に関するより厳格な規則を導入しています。また、以下の点にも留意する必要があります。
- 法人銀行口座の開設: 2024年初頭より、実口座開設には通常2名以上のLda.株主が必要となります。一方で、単独株主のLda.やオンライン口座の開設も正式に認められるようになりました。
- デジタルバンキングの強化:EUの新しい決済サービス規則(PSR)とPSD3は、より強力なセキュリティ対策を導入します。これらの規則は、透明性と即時決済を優先しながら、オープンバンキングへのアクセスを拡大します。
- 規制コンプライアンスの強化:
- 最終受益所有者 (UBO) 登録: UBO登録はポルトガルのすべての法人に対して義務付けられ、透明性が向上します。
- ESG要件の強化:持続可能性への要求は高まっています。銀行は融資残高を「グリーン化」するよう圧力を受けています。EUのグリーンボンド規制は2024年12月21日に発効しました。
- その他の注目すべき変更点:
- 暗号通貨規制:欧州証券市場監督局が起草したMiCA(暗号資産市場)規制は、 2024年12月30日に発効しました。この規制は、ユーザーと投資家を保護しながら、EUの仮想資産規制の範囲内でブロックチェーンとDLTの導入を合理化することを目的としています。
- ゴールデンビザ制度の変更:近年、この制度は変更が加えられています。不動産購入は資格要件ではなくなりました。ただし、ファンド投資、文化的な寄付、雇用創出は引き続き有効です。
ポルトガル進出を検討する国際企業向けの留意点
ポルトガルは、外国からの投資に対して非常に開かれた姿勢を取っており、法律上も外国資本の参入に対して大きな制限は設けられていません。会社の株主に対する国籍や居住地の制限は基本的に存在せず、法人設立手続き自体も国内外の事業者に対して一貫した流れで提供されています。
しかし、外国企業・外国籍個人がポルトガルに拠点を設ける際には、いくつかの特有の留意点があります。
- 滞在・ビザに関する要件:
- EU国民の場合:3か月を超える滞在には居住証明書( Certificado do Registo de Cidadão da União Europeia – CRUE ) が必要です。
- EU以外の国民の場合:通常、ポルトガルの就労ビザと居住許可が必要です。外国人居住者は、税金 (NIF) と社会保障番号 ( Número de Identificação de Segurança Social – NISS ) に加えて、現地の銀行口座も必要です。
- ゴールデンビザプログラム(Golden Visa):この代替パスは、EU域外居住者が投資を通じて居住許可を取得できるものです。選択肢としては、50万ユーロを投資して5人の雇用を創出する企業、または固定投資なしで10人の雇用を創出する企業があります。
- 税務代理人の要件: EU/EEA 非居住者の個人または企業には、現地の税務代理人が必須です。
- 銀行口座開設の課題:外国人にとって、法人口座の開設は時間がかかり、2ヶ月以上かかることも珍しくありません。所要時間は銀行、国籍、そして担当者の対応によって異なります。現地の専門家に依頼することを強くお勧めします。
- 外国企業向けの追加書類:支店または子会社を設立するには、損益計算書や貸借対照表を含む親会社の書類をポルトガル商業登記所に提出する必要があります。
ポルトガル進出を成功へ導く専門パートナー
ポルトガルのビジネスチャンスは、すでにご覧のとおりです。今、この国はグローバル企業に向けて扉を大きく開いています。しかし、法人設立から継続的なコンプライアンス対応まで、変化の激しい環境を乗り越えるには、「やる気」だけでは足りません。必要なのは、戦略的なパートナーシップです。
国際企業にとって、現地に信頼できる代表者を置くことは、もはや選択肢ではなく必須といえるでしょう。銀行口座の開設、複雑なデューデリジェンスの対応などそれらは単なる手続きではなく、進出プロジェクトのボトルネックになりかねない重要なポイントです。
ポルトガル市場での成功には、忍耐力・綿密な準備・そして現地事情に精通した知識が求められます。
そのようなパートナーは、貴社の成長に合わせて柔軟にスケールできる存在です。市場を試す段階で海外雇用代行サービス(EOR)を活用する場合でも、フルチームを構築して本格展開する場合でも、あるいは業務効率の最大化を図る場合でも、包括的なサービスを提供するプロバイダーであれば、あらゆる側面をサポートできます。
具体的には法人設立、コーポレートセクレタリー、人材採用、人事・労務管理(HR)、グローバル給与計算、税務・会計、支払い管理など、事業運営に必要な領域をワンストップでカバーし、ポルトガルでの成長を力強く支援します。
彼らは、「管理的で手間のかかる業務」をすべて代行します。複雑な手続きや制度を的確に整理し、貴社が煩雑さに煩わされることなく、本来のビジネスに集中できる環境を整えます。
こうして、ポルトガル進出は単なる計画ではなく、確かな成功へと確実に変わっていくのです。
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