フランスでの採用:EOR、Portage Salarial、直接雇用の仕組み(2026年版)

フランスでは、EORサービスは一般的に「portage salarial(ポルタージュ・サラリアル)」という枠組みを通じて提供されます。ここでは、採用にあたってこの仕組みが何を意味するのか、どのような制限があるのか、また、直接雇用がより適した選択肢となるのはどのような場合なのかを解説します。
要点
- 雇用代行(EOR:Employer of Record)を利用すると、海外企業は自社の現地法人を設立せずにフランスで従業員を雇用できます。
- フランスには、EORの仕組みを独立して規定する法的枠組みはありません。実務上、EORサービスは一般的にportage salarialを通じて提供されます。
- Portage salarialは、定められた専門サービスを提供する、資格と自律性を備えた専門職に限定された規制上の枠組みです。
- この仕組みを有効に利用するには、専門職と業務委託の内容がportage salarialの要件を満たしている必要があります。
- 恒常的な事業運営や、portage salarialの枠組みに適合しない職務については、フランス法人を通じた直接雇用の方が適している場合があります。
- フランスでの採用方法を選択する前に、企業は職務と業務委託の内容を評価する必要があります。
フランスではEORの仕組みが他国と異なる理由
EORは、自社の現地法人を設立せずに海外で人材を雇用したい国際企業に広く利用されています。しかしフランスでは、このサービスを支える法的な仕組みについて、より慎重に検討する必要があります。
フランスには、EORの仕組みを独立して規定する法的枠組みはありません。実務上、EORサービスは一般的に、portage salarialを通じて提供されます。これは、フランス労働法典および全国Portage Salarial労働協約によって規制されている雇用モデルです。
この仕組みでは、プロバイダーが法的雇用主となり、給与計算、社会保険料の納付、雇用管理、法令上のコンプライアンス対応を担います。一方、クライアント企業は、労働者が提供する専門サービスの恩恵を受けます。
ただし、portage salarialは、あらゆる職務に利用できるわけではありません。専門職には、必要な専門知識、資格、自律性が求められます。また、業務委託は法律で認められた要件を満たし、恒常的な人員確保の手段ではなく、専門サービスの提供として運用されなければなりません。
そのため、フランスで人材を採用する企業が最初に検討すべきなのは、EORとportage salarialのどちらを選ぶかということではありません。専門職と業務委託の内容が、EORの仕組みをコンプライアンスに準拠した形で運用するための法的枠組みに適合しているかどうかです。
Portage salarialとは?
Portage salarialは、単なるアウトソーシングモデルではありません。
これは、フランスの労働法に基づいて確立された正式な雇用の枠組みです。この仕組みでは、労働者、クライアント企業、そして法的雇用主となるportage会社の三者間で関係が構築されます。
コンサルタントはクライアント企業にサービスを提供し、クライアント企業はportage会社と契約を締結します。
Portage会社は労働者を雇用し、給与計算、雇用管理、法令上の義務への対応を担います。
多くの国際的な採用モデルとは異なり、portage salarialは商慣習ではなく、特定の法的要件に基づいて規制されています。
これは特定の種類の業務に適した、確立された仕組みですが、あらゆる採用形態を想定したものではありません。
Portage salarialはどのような場合に適しているか?
Portage salarialは、定められた業務において専門的な知識や技能を提供する、経験豊富な専門職を対象としています。
代表的な例として、次のような職種が挙げられます。
- シニアコンサルタント
- 技術専門職
- 臨時の経営幹部
- プロジェクトマネージャー
- 期間が定められた業務に従事する専門家
こうした契約は比較的迅速に開始でき、フランス企業や現地当局にも広く認知されています。
初めてフランスに進出する企業にとって、portage salarialは、直ちに現地法人を設立することなく、専門人材をコンプライアンスに準拠した形で活用できる方法となり得ます。
ただし、あらゆる採用形態に適しているわけではありません。
Portage salarialにはどのような制限があるか?
Portage salarialは特定の法的枠組みの下で運用されており、その枠組みには重要な制限があります。
主な制限は次のとおりです。
| 制限 | 意味すること |
|---|---|
| 資格を要する専門サービスに限定 | Portage salarialは、資格や専門性を必要とする業務を対象としています。通常の管理体制に組み込まれたオペレーション業務、肉体労働、事務職には一般的に適していません。 |
| 業務委託期間の上限 | 同一のクライアントとの業務委託期間は、一般的に最長36か月です。そのため、恒常的または期間の定めのない業務では、制度上の問題が生じる可能性があります。 |
| 労働者の自律性 | 労働者は、実質的な専門職としての自律性を維持する必要があります。従来型の従業員と同じように管理される職務は、この枠組みに適合しない可能性があります。 |
適格性は、業務委託そのものの内容にも左右されます。クライアント企業と専門職は、サービスの範囲と商業上の条件について、直接合意する必要があります。
この仕組みは、恒常的な人員配置のための汎用的な手段としてではなく、内容が明確に定められた専門サービスを中心に構築すべきです。
Portage salarialでは、職務だけでなく当事者間の関係も適合している必要がある
こうした制限は、portage salarialが本来支援することを目的として設計された雇用関係を反映しています。
企業は、職務内容、想定される契約期間、労働者に求められる自律性の程度を総合的に評価する必要があります。専門資格を持つ人材であっても、書面上は制度の要件を満たしているように見える一方、実際には社内チームの恒常的な一員として働くのであれば、この仕組みが適切でない場合があります。
Portage salarialは、法的な仕組みと実際の業務の進め方が一致している場合に、最も効果的に機能します。
フランスでEORを利用できるのはどのような場合か?
EORを利用すると、海外企業は自社の現地法人を設立することなく、フランスで人材を活用できます。ただし、その仕組みはportage salarialの要件を満たしていなければなりません。つまり、採用のスピードや利便性よりも、まず利用要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
専門職と業務委託の両方が要件を満たす必要がある
専門職には、portage salarialの枠組みで求められる専門知識、資格、自律性が必要です。また、業務委託も、法律で認められた要件を満たし、内容が明確に定められた専門サービスを中心に構成されていなければなりません。
クライアント企業と専門職は、サービスの範囲や商業上の条件について直接合意します。当事者間の関係は、クライアント企業の通常の従業員として恒常的に組み込まれる形ではなく、専門性に基づく業務上の関係を反映したものであるべきです。
こうした条件は、採用を開始する前に評価する必要があります。現地法人を設立せずにフランスで人材を採用したいという理由だけで、その職務がEORに適していると判断することはできません。
EORが適切な選択肢ではなくなるのはどのような場合か?
まず確認すべきなのは、その業務委託が引き続きportage salarialの要件を満たしているかどうかです。
専門職が必要な自律性を維持できなくなった場合や、業務委託の内容がクライアント企業の従業員として恒常的に働く形に近づいた場合、その職務はこの枠組みに適合しなくなる可能性があります。
また、引き続き利用要件を満たしている場合でも、事業全体の変化によっては、直接雇用の方が適切になることがあります。
主な検討事項は次のとおりです。
| 検討事項 | 重要である理由 |
|---|---|
| 従業員数の増加 | 従業員数が増えると、最終的には現地法人の設立が合理的な選択肢となる場合があります。 |
| 長期的な事業展開 | フランスで恒常的に事業を展開する場合、直接雇用と現地の事業基盤を整備することが有益な場合があります。 |
| 事業運営の複雑化 | 現地での契約、会計、税務、その他の幅広い企業活動に対応するため、雇用以外の目的でも法人が必要になる場合があります。 |
企業は、業務委託が利用要件を満たしているかどうかに加え、その雇用形態がフランスで構築しようとしている事業運営体制に引き続き適しているかどうかも確認する必要があります。
フランス法人を通じた直接雇用を検討すべきなのはどのような場合か?
直接雇用とは、フランスに自社の法人を設立し、労働者を直接雇用することです。
第三者を雇用主として利用するのではなく、企業自身が給与計算、雇用に関するコンプライアンス、税務報告、継続的な人事管理について責任を負います。
法人の設立には、portage salarialの枠組みを利用してEOR経由で採用する場合よりも、多くの時間と投資が必要です。
その分、雇用関係をより直接的に管理できる一方で、雇用、給与計算、継続的なコンプライアンス対応に関する責任も大きくなります。
フランスで長期的に事業を展開する企業にとっては、こうした追加的な責任を負うメリットが大きくなることも少なくありません。
直接雇用には何が必要か?
従業員を直接雇用する前に、企業は通常、フランスで雇用を行うために必要な事業運営基盤を整備する必要があります。
具体的には、次のような義務への対応が含まれます。
- 事業者としての登記を行い、必要な雇用主登録を完了する
- 雇用開始前に、義務付けられている雇用前届出(Déclaration Préalable à l’Embauche:DPAE)を提出する
- 毎月の給与関連報告である社会保険記名申告(Déclaration Sociale Nominative:DSN)を管理する
- フランスの法令に準拠した雇用契約書を作成・発行する
- 給与計算、税務、社会保険料に関する継続的な義務を履行する
- 法令で義務付けられた福利厚生を提供し、必要に応じて適用される労働協約を遵守する
こうした責任により管理業務の負担は増えますが、その一方で、雇用関係を全面的に管理できるようになります。
直接雇用が最も適しているのはどのような場合か?
直接雇用は、フランスが長期的な戦略市場となった場合に、一般的に最も有力な選択肢となります。
主な判断材料として、次のような点が挙げられます。
- 現地の従業員数が増加している
- 長期的な採用計画がある
- フランスで恒常的に事業を展開している
- 現地の経営・管理体制がある
- 顧客との継続的な取引関係がある
- 会社の事業運営に全面的に組み込まれる必要がある職務が存在する
従業員数は、判断材料の一つにすぎません。より重要なのは、企業がフランスで長期的な事業運営基盤を構築することにどの程度取り組む意思があるかという点です。
フランスでの採用にあたり、企業はどのように雇用形態を選ぶべきか?
まず、企業がどのような職務や雇用関係を構築する必要があるのかを明確にしましょう。そのうえで、採用までの期間、従業員数、フランスでの長期的な事業計画を検討します。
専門職と業務委託はportage salarialの要件を満たしているか?
専門職には、必要な専門知識、資格、自律性が求められます。また、業務委託も、法律で認められた要件を満たし、内容が明確に定められた専門サービスを伴うものでなければなりません。
クライアント企業の通常の従業員として恒常的に組み込まれる職務は、この枠組みの要件を満たさない可能性があります。その場合は、フランス法人を設立し、直接雇用する方が適切な場合があります。
どのくらい早く採用する必要があるか?
数週間以内に採用する必要がある場合、フランス法人を設立する方法は現実的ではない可能性があります。
業務委託がportage salarialの要件を満たしていれば、EORを利用することで、企業が長期的な事業体制を検討する間に、より迅速に採用を進められます。
一方、6か月以上先を見据えて事業を計画している場合は、法人設立も現実的な選択肢となります。
チームの規模はどの程度になる見込みか?
最初の1人を採用するだけでは、全体像は見えてきません。
専門職を1人採用する予定の企業と、20人規模のチームや地域統括拠点を構築する予定の企業とでは、必要な事業基盤が異なります。
想定される従業員数は、コストや管理体制に影響するだけでなく、事業の成長に伴って当初の雇用モデルが引き続き適切かどうかにも関わります。
フランスは長期的な市場か?
要件を満たす業務委託であれば、portage salarialを通じたEORは、初期の市場参入を支援する手段となります。
一方、フランスで恒常的に事業を展開すること、継続的に採用を行うこと、現地の経営・管理体制を構築することを予定している場合は、フランス法人を通じた直接雇用の方が適していると考えられます。
採用モデルは、フランスが自社の事業においてどのような役割を担うことになるのかを反映したものであるべきです。
自社の優先事項に照らして2つの選択肢を比較する
| 判断要素 | Portage salarialを通じたEOR | 直接雇用 |
|---|---|---|
| 資格と自律性を備えた専門職 | 適している可能性がある | 適している |
| 内容が明確に定められた専門サービスの業務委託 | 必須 | 必須ではない |
| 社内に恒常的に組み込まれる職務 | 要件を満たさない可能性がある | 適している |
| 自社のフランス法人 | 不要 | 必要 |
| 法的雇用主 | Portage会社 | 自社のフランス法人 |
| フランスでの恒常的な事業運営 | 制約が生じる可能性がある | 直接雇用を前提とした仕組み |
適切な雇用形態とは、目の前の採用ニーズに対応できるだけでなく、その先の事業展開に支障をきたさないものです。
フランスが長期的な市場になると見込んでいる企業は、現在の雇用形態が制約となる前に、移行に向けた計画を立て始めるべきです。
フランスで雇用モデルを選ぶ際、企業が陥りやすい間違いとは?
採用に関する課題の多くは、プロバイダーの選択を誤ることよりも、採用モデルの背景にある法的枠組みを正しく理解していないことから生じます。
特に、次のような間違いが繰り返し見られます。
EORとportage salarialを別々の採用モデルとして扱う
フランスでは、EORは一般的にportage salarialの枠組みを利用しています。この2つを競合する別々の選択肢として扱うと、その仕組みが有効に成立するかどうかを左右する法的条件が見えにくくなる可能性があります。
導入を進める前に、専門職と業務委託の両方がportage salarialの要件を満たしていることを確認しましょう。
目先の要件だけで判断する
最も迅速に採用できる方法が、長期的な事業運営モデルとして最適とは限りません。
企業は、最初の従業員をどれだけ早く採用できるかだけでなく、数年後に事業がどのような状態になっていると見込まれるかも評価する必要があります。
事業運営モデルを比較せずにコストだけを比較する
プロバイダーに支払う料金だけでは、費用の全体像はわかりません。
企業は、法人設立費用、継続的なコンプライアンス対応、給与計算、人事・財務などの社内リソース、そして各モデルが長期的に提供する事業運営上の柔軟性についても検討すべきです。
移行計画の着手が遅れる
多くの企業は、まずEORを利用し、その後に自社のフランス法人を設立します。
この方法を円滑に進めるには、早い段階から将来の移行を検討しておくことが重要です。従業員数の急増、従業員の転籍、事業活動の拡大などが生じると、計画の着手が遅れるほど移行の管理が難しくなります。
フランスでの採用に関するよくある質問
Portage salarialとEORの違いは何ですか?
EORは、海外企業に提供される採用ソリューションを指します。一方、portage salarialは、そのサービスを提供する際に一般的に利用される、フランスの規制対象となる雇用の枠組みです。
フランスには、EORの仕組みを独立して規定する法的枠組みはありません。そのため、フランスでEORを利用する場合、一般的にportage salarialの要件を満たす必要があります。
EORを利用すれば、フランスであらゆる種類の従業員を雇用できますか?
いいえ。フランスでは、EORを汎用的な雇用サービスとして利用することはできません。
Portage salarialを通じて雇用する場合、専門職と業務委託の両方が、この枠組みの条件を満たす必要があります。具体的には、専門知識、資格、自律性、そして提供する専門サービスの内容に関する要件が含まれます。
Portage salarialでは、どのくらいの期間働くことができますか?
同一のクライアントとの業務委託期間は、一般的に最長36か月です。恒常的な雇用を計画している企業は、別の採用モデルの方が長期的な目標に適しているかどうかを検討すべきです。
自社のフランス法人を設立すべきなのはどのような場合ですか?
フランスが長期的な戦略市場となった場合、従業員数が継続的に増加している場合、あるいは幅広い事業活動を行うために恒常的な現地拠点が必要になった場合には、法人設立が適切な選択肢となることがよくあります。
フランスでは、EORを恒常的な採用ソリューションとして利用できますか?
Portage salarialを通じたEORは、恒常的な人員確保のための汎用的なソリューションとして設計されたものではありません。この仕組みを利用するには、portage salarialの枠組みで定められた条件を継続的に満たす必要があります。
フランスで恒常的な事業運営、社内に組み込まれる職務、または幅広い採用を計画している企業は、自社の法人を設立して従業員を直接雇用する方が適切かどうかを検討すべきです。
名称ではなく、法的枠組みを選ぶ
フランスにおけるEORは、その背後にある法的枠組みと切り離して考えることはできません。
自社のフランス法人を持たずに人材を採用する海外企業にとって、その枠組みは一般的にportage salarialです。そのため、専門職の資格や自律性、提供するサービスの内容など、同制度の要件に適合している必要があります。
職務がこれらの条件を満たさない場合や、フランスで恒常的な事業運営を構築しようとしている場合は、フランス法人を通じた直接雇用の方が適切な選択肢となる可能性があります。
まず、どのような職務と雇用関係を構築する必要があるのかを明確にしましょう。そのうえで、コンプライアンスに準拠した形でその実現を支援できる事業体制を選択してください。
フランスでの採用をお考えですか?GoGlobalはチームに適した、コンプライアンスに準拠した雇用体制の構築を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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