はじめての海外赴任ガイド連載第4回:海外赴任の手続きチェックリスト【2026年版】

はじめに:手続き漏れは「後戻りできない」リスクになる
海外赴任は、国内転勤の数倍にあたる量の手続きを、限られた時間内に正確に処理する必要があります。
さらに厄介なのは、手続きの多くが「期限を過ぎたら取り返せない」「順番を間違えると次に進めない」という性質を持つことです。
例えば、転出届を出すと印鑑証明が取れなくなる。社会保障協定の適用証明書は出国前に取得しないと現地で二重払いになる。雇用保険の受給延長申請を忘れると、帰国後の失業給付が受けられなくなる――こうした「取り返せない失敗」を防ぐには、時系列で整理されたチェックリストに沿って淡々と進めるのが最も確実です。
本ブログでは、海外赴任の全タスクを「出国3ヶ月前」「2ヶ月前」「1ヶ月前」「2週間前」「出国直後」「赴任中」「帰任前」「帰任後」の8フェーズに分けて整理しました。印刷して手元に置き、一つずつチェックを入れていく形でご活用ください。
【フェーズ1】出国3ヶ月前:最優先タスク
辞令が出たら、まず時間のかかる手続きから着手します。3ヶ月前というと余裕があるように感じますが、ビザ申請や住居決定はこの時期から動き始めないと出国に間に合いません。
パスポート・ビザ関連
- □ パスポートの有効期限・残存期間を確認(多くの国で6ヶ月以上必要)
- □ 必要に応じてパスポートの新規申請・更新
- □ 家族帯同の場合、家族全員分のパスポート確認・取得
- □ 就労ビザ申請に必要な書類の収集(無犯罪証明書、健康診断書、学歴証明、戸籍謄本のアポスティーユ等)
- □ ビザ申請手続きの開始(通常は会社が手配、個人が必要書類を準備)
家族・住居関連
- □ 家族帯同の方針決定(全員帯同/一部帯同/単身赴任)
- □ 配偶者の退職/休職/リモート継続の方針決定
- □ 子どもの転校手続き、学校への連絡
- □ 現地の学校情報収集・問合せ(日本人学校、現地校、インターナショナルスクール)
- □ 持ち家の方針決定(売却/賃貸/空き家管理)
- □ 賃貸の場合、解約予告の準備
健康・予防医療
- □ かかりつけ医での健康診断・常備薬の処方
- □ 渡航先に必要な予防接種スケジュールの確認・接種開始
- □ 歯科治療の開始(出国前に完了させる)
- □ 母子手帳・予防接種記録の英訳準備(子どもがいる場合)
情報収集
- □ 赴任先の生活情報収集(住居エリア、治安、交通、医療機関、買い物事情)
- □ 赴任先での社内体制・業務内容の確認
- □ 現地語の基礎学習開始
| 人事担当者向けポイント ・辞令交付と同時に「赴任前手続きガイド」を配布 ・社会保障協定の適用証明書交付申請(年金事務所)の準備開始 ・労災保険の特別加入申請手続きの準備 ・海外駐在員保険の手配開始 |
【フェーズ2】出国2ヶ月前:本格的な準備フェーズ
引越し関連
- □ 海外引越業者の選定・見積もり(複数社比較推奨)
- □ 船便・航空便・現地調達の仕分け
- □ 不用品の処分・売却計画
- □ 大型家具・家電の処分方針決定
- □ ピアノ・大型ペットなど特殊輸送物の手配
金融・契約整理
- □ 銀行口座の非居住者対応の確認
- □ 証券口座の対応確認(多くは解約が必要)
- □ クレジットカードの海外利用可否確認、家族カード手配
- □ 生命保険・医療保険の継続可否確認
- □ 住宅ローン・各種ローンの非居住者扱い確認
- □ 定期積立・口座振替の停止または変更
税金・社会保険関連
- □ 出国時年末調整の対応確認(経理部門)
- □ 準確定申告が必要かの判断(給与2,000万円超、不動産所得ありなど)
- □ 納税管理人の選定(不動産所得や住民税未納付がある場合)
- □ 住民税の納付方法決定(一括/会社天引き継続/納税管理人経由)
自動車関連
- □ 自動車の売却・廃車・保管の方針決定
- □ 自動車保険の解約または中断証明書の取得
- □ 国際運転免許証の取得(必要な国の場合)
- □ 賃貸駐車場の解約通知
【フェーズ3】出国1ヶ月前:解約・最終手配
生活インフラの解約
- □ 電気・ガス・水道の解約手続き
- □ NHKの解約手続き
- □ 固定電話・インターネット回線の解約
- □ 携帯電話の解約または海外プラン切替
- □ ケーブルテレビ・各種サブスクリプションの整理
- □ 新聞・牛乳・生協などの宅配契約解除
郵便物の対応
- □ 郵便局への転送届(または郵便物管理サービスの契約)
- □ 重要な連絡先への新住所・新連絡先の通知
学校・習い事
- □ 子どもの学校への退学届の提出
- □ 在学証明書・成績証明書の取得
- □ 海外子女教育振興財団(JOES)への教科書受取手続き
- □ 学習塾・習い事の解約
会社関連
- □ 業務引継ぎの本格化
- □ 社内・取引先への赴任挨拶
- □ 健康保険被扶養者異動届の提出(家族帯同の場合)
- □ 介護保険適用除外該当届の提出(40歳以上65歳未満の場合)
引越し・荷造り
- □ 船便荷物の荷造り・発送(到着まで2ヶ月以上)
- □ 通関用インボイス(内容物リスト)の作成
- □ 不用品の処分実行
【フェーズ4】出国2週間前:最終手続き
行政手続き
- □ 国外転出届の提出(市区町村役場、出国14日前から受付)
- □ マイナンバーカードの継続利用手続き(窓口のみ、郵送不可)
- □ 印鑑証明書の取得(必要な場合、転出届前に)
- □ 戸籍関係書類の取得(家族帯同に必要な場合)
会社・税務
- □ 適用証明書(社会保障協定)の受領
- □ 労災特別加入の承認確認
- □ 海外駐在員保険証券の受領
- □ 出国時年末調整の精算
- □ 退職金準備金・赴任前貸付金等の確認(会社規程による)
実生活
- □ 航空便荷物の荷造り・発送
- □ 手荷物の最終確認
- □ 現地通貨の両替(最低限の現金確保)
- □ クレジットカードの海外利用枠引上げ申請
- □ 配偶者の雇用保険受給期間延長手続き(離職している場合)
| 最終チェック:忘れ物の典型例 ・パスポート、ビザ、航空券、入国書類 ・現地で必要な処方薬と処方箋の英訳 ・銀行口座・カードの暗証番号、ネットバンキングのID/パスワード ・重要書類の原本とコピー(戸籍、住民票、卒業証明、母子手帳など) ・変圧器・変換プラグ(国によって電圧・コンセント形状が異なる) |
【フェーズ5】出国直後〜現地到着:着任手続き
空港〜住居まで
- □ 入国審査・税関手続き
- □ 空港から宿泊先・住居までの移動手配確認
- □ 現地SIMカードの調達または国際ローミング設定
現地での初期手続き(到着後1〜2週間以内)
- □ 在留届の提出(3ヶ月以上の滞在は法律上の義務、ORRネットで可)
- □ 現地住居の本契約(仮住まいから本住居への移行)
- □ 現地銀行口座の開設
- □ 現地での就労許可・在留許可の現地手続き
- □ 現地での所得税登録(国によって異なる)
- □ 子どもの学校への正式入学手続き
- □ 健康診断・予防接種の追加分の対応
- □ 運転免許の現地切替(必要な国の場合)
荷物の受取
- □ 航空便荷物の受取と通関
- □ 船便荷物の受取と通関(到着後さらに1〜2ヶ月後)
- □ 破損・紛失の確認、保険請求(該当時)
【フェーズ6】赴任中:継続的な管理タスク
日本側で継続する手続き
- □ 住民税の納付状況確認(納税管理人または会社経由)
- □ 不動産所得がある場合の確定申告(毎年)
- □ 健康保険料・厚生年金保険料の継続徴収確認
- □ 持ち家の管理状況の確認
- □ 日本の各種契約の更新・解約管理
現地での継続管理
- □ 就労ビザ・在留許可の更新(期限管理)
- □ パスポートの有効期限管理(残存期間に注意)
- □ 現地での所得税の申告・納税
- □ 現地の医療機関・緊急連絡先の把握
- □ 子どもの学校・進学関連の継続フォロー
万一の場合の備え
- □ 日本の家族・親族との緊急連絡網の整備
- □ 外務省「たびレジ」への登録(短期出張時も含む)
- □ 現地大使館の連絡先把握
- □ 安全情報の定期的なチェック
【フェーズ7】帰任前:帰国準備
帰任が決まったら、出国時と同じく時系列で逆算した準備が必要です。出国時よりも荷物が増えていることが多く、想定以上に時間がかかるケースが一般的です。
3ヶ月前
- □ 帰任日の正式決定と会社への報告
- □ 帰国後の住居決定(持ち家戻り/新居探し/会社借上げ)
- □ 子どもの編入学手続き・学校探し
- □ 配偶者の再就職活動開始(必要な場合)
2ヶ月前
- □ 現地引越業者の選定・見積もり
- □ 現地での荷物仕分け(持ち帰る/処分する/現地に残す)
- □ 業務引継ぎの計画策定
- □ 現地住居の解約予告
1ヶ月前
- □ 現地各種契約の解約(電気、水道、通信、銀行など)
- □ 現地税務の最終申告準備
- □ 現地での挨拶回り
- □ 子どもの学校への退学届・成績証明書取得
出発直前
- □ 在留届の抹消手続き
- □ 現地銀行口座の処理(解約/残高送金)
- □ 現地での税還付の手続き
- □ 帰国便のチェックイン・最終荷造り
【フェーズ8】帰任後:日本での再スタート
行政手続き(到着後14日以内)
- □ 転入届の提出(住民票の再登録)
- □ マイナンバーカードの利用再開手続き
- □ 国民健康保険・国民年金の再加入(無職期間がある場合)
- □ 介護保険適用除外非該当届の提出
- □ 印鑑登録
金融・契約
- □ 銀行口座の居住者扱いへの戻し
- □ クレジットカードの再有効化
- □ 携帯電話・インターネットの新規契約
- □ 電気・ガス・水道の開通
- □ NHK・新聞などの各種契約再開
自動車・運転免許
- □ 運転免許証の再交付または更新(失効している場合)
- □ 自動車保険の中断証明書による再加入(等級引継ぎ)
- □ 自動車の購入・賃借
税務
- □ 帰国年の確定申告準備(翌年2〜3月)
- □ 不動産所得など居住者期間と非居住者期間の合算処理
- □ 外国税額控除の適用検討
家族の手続き
- □ 子どもの転入学手続き完了
- □ 健康保険被扶養者の再登録
- □ 配偶者の雇用保険受給開始手続き(再就職活動する場合)
| 帰任後の落とし穴 「日本に戻ったら全部元通り」と思いがちですが、実際は数十項目の再手続きが必要です。 特に確定申告は、帰国した翌年2〜3月に必要となるため、忘れがちです。 また、帰任後の住民税は翌々年6月から課税再開するため、最初の1年は手取りが多くなり、翌年から減ったように感じることになります。家計設計に注意。 |
【人事担当者向け】チェックリスト運用のコツ
赴任者ごとに「個別カルテ」を作る
赴任者ごとに進捗を管理する個別カルテを作り、人事・経理・赴任者本人の三者で進捗を共有する仕組みが効果的です。最近は海外赴任サポートサービスがクラウド型の管理ツールを提供しているケースもあります。
「赴任前研修」でチェックリストを共有
赴任の1〜2ヶ月前に、本人と配偶者を含めた赴任前研修を実施し、チェックリストを共有することで、抜け漏れを大幅に減らせます。研修では税務・社会保険・安全管理など、外部専門家を招いて知識を補完するのも効果的です。
過去の赴任者の経験を活かす
「実際に赴任して、何が一番大変だったか」「想定外だったことは何か」というアンケートを赴任経験者から定期的に収集し、チェックリストや規程をアップデートしていく仕組みが、組織としての成熟度を高めます。
【視点を変えて】そもそも「赴任」が前提でない選択肢
ここまで膨大なチェックリストを見て、「これだけの手続きを乗り越えてまで、本当に駐在員を送る必要があるのか?」と感じた方もいるかもしれません。実は、近年はその問いに向き合う企業が増えています。
| EOR活用で手続きの大半を不要にできるケース 現地でやらせたい業務が明確で、人数も少数(1〜5名)の場合、駐在員を送る代わりにEORで現地スタッフを雇用するという選択肢があります。 ・現地法人設立不要 ・出国前の数十項目の手続きが不要(社員を送らないため) ・現地の労務管理・税務・社会保険はすべてEORプロバイダーが担当 ・撤退時もスムーズ GoGlobalでは、80カ国以上で現地法令に準拠したEORサービスを提供しています。「駐在員を送らない海外展開」を検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。 |
まとめ:チェックリストは「最強の安心材料」
海外赴任の手続きは、項目数も多く、それぞれに期限と依存関係があるため、頭の中だけで管理しようとすると必ず抜け漏れが発生します。本記事のチェックリストを印刷し、手元に置きながら一つずつ確実に進めることで、出国までのストレスは大幅に減らせます。 人事担当者の方は、このチェックリストを参考に、組織として再現性のある赴任サポートを実現してください。
| GoGlobalがサポートできること GoGlobalは、80カ国以上で展開する海外雇用代行(EOR:Employer of Record)および海外BPOサービス(BCS:Business & Corporate Service)のグローバルプロバイダーです。 ・海外赴任者の手続き・労務サポートをアウトソースしたい ・駐在員を送らずに、EORで現地スタッフを直接雇用したい ・複数国に展開するスタッフの手続きを一元管理したい こうしたお悩みに、グローバルモビリティの専門チームが日本語でご相談を承ります。お気軽にお問い合わせください。 |
連載:はじめての海外赴任ガイド
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連載第1回:海外赴任が決まったら最初にやるべき15のこと【2026年版】
連載第2回:海外赴任の税金はどうなる? 居住者・非居住者の判定と確定申告の基本【2026年版】
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