はじめての海外赴任ガイド連載第6回:海外赴任が決まった配偶者へ 帯同・別居・キャリア継続の選択肢を整理する【2026年版】

はじめに:配偶者の海外赴任は「家族の意思決定」
「来年から海外勤務になることになった」
パートナーからこの言葉を聞いた時、あなたは何を感じたでしょうか。新しい環境への期待、不安、自分のキャリアへの戸惑い、子どもの教育への懸念、親の介護の心配。さまざまな思いが交錯するはずです。
海外赴任は、赴任者本人だけの話ではなく、家族全員のライフプランに大きな影響を与える出来事です。「帯同して新しい生活を始める」「日本に残って待つ」「キャリアを継続する形で別の解を探す」――どの選択にも正解はなく、家族ごとの価値観・状況によって最適解は異なります。 本記事では、配偶者の海外赴任が決まった時に取り得る3つの主要な選択肢を整理し、それぞれのメリット・デメリット、必要な準備、現代的な解決策(リモートワークによるキャリア継続など)を解説します。家族会議のたたき台としてご活用ください。
【全体像】配偶者が取り得る3つの選択肢
| 選択肢 | 基本コンセプト | 向いている家族 |
|---|---|---|
| ①帯同(仕事は退職または休職) | 配偶者・子どもと一緒に海外で暮らす | 家族の時間を優先したい・キャリアを一時休止できる |
| ②別居(単身赴任) | 配偶者は日本でこれまでの生活を続ける | キャリア・親の介護・子どもの教育で日本に残る必要がある |
| ③帯同+キャリア継続 | 帯同しながらリモートで仕事を続ける | 仕事も家族も諦めたくない・現代の働き方を活用したい |
以下、それぞれの選択肢を詳しく見ていきます。
【選択肢1】帯同:仕事は退職または休職
メリット
- 家族で一緒に過ごせる時間が確保できる
- 子どもにとってグローバルな教育環境・多言語環境が得られる
- 海外生活そのものが人生経験になる
- 家族としての一体感が強まる
- 赴任者の精神的サポートになり、駐在のパフォーマンスにも貢献
デメリット・留意点
- 自身のキャリアが一時中断する(5年離れると再就職のハードルは高い)
- 経済的に夫または妻に依存する状態になる
- 現地で「駐在妻/駐在夫」というコミュニティ依存になりがち
- 帰国後の再就職に時間がかかる
- 配偶者の就労ビザが取れない国も多い(帯同ビザでは就労不可)
帯同に向く家族の特徴
- 子どもがまだ小さい(小学校低学年以下)家族
- 配偶者自身がキャリアの一時休止を許容できる、または海外でやりたいこと(語学習得、留学、ボランティアなど)がある家族
- 経済的に主たる生計者の収入で十分に生活できる家族
- 赴任期間が3〜5年程度の場合(10年を超えると帰国後の調整が困難)
帯同の場合の必須準備
- 配偶者の退職または休職の手続き
- 雇用保険の受給期間延長申請(離職後30日経過後〜4年以内)
- 帯同ビザの申請(赴任者ビザに紐づく形)
- 健康保険被扶養者の手続き
- 子どもの学校手続き、教育環境の選定
- 帰国後のキャリア再開プランの整理
| 帯同前に話し合っておきたいこと ・帯同期間中の家計はどう運営するか ・配偶者がやりたいこと(語学、習い事、留学、ボランティア)への家計の配分 ・帰国後のキャリア再開のためにどんな準備を続けるか ・現地でのコミュニティとの関わり方 ・もし現地で配偶者のメンタル不調が起きた場合の対応 |
【選択肢2】別居(単身赴任):それぞれの場所で暮らす
メリット
- 配偶者のキャリアを中断せずに続けられる
- 子どもの教育環境を変えずに済む(受験期の子どもがいる場合に重要)
- 親の介護を継続できる
- 配偶者の経済的自立を維持できる
- 赴任者は仕事に集中できる(家庭の責任が一時的に軽減)
デメリット・留意点
- 家族で過ごす時間が大きく減る(年1〜2回の一時帰国と数回のビデオ通話)
- 子どもの成長を直接見られない期間が生じる
- 家計が二重生活で増える
- 夫婦の心理的距離が広がるリスク
- 赴任者の孤独感、メンタルヘルス課題が生じやすい
単身赴任に向く家族の特徴
- 配偶者が自分のキャリアの最重要時期にある家族
- 子どもが高校・大学受験などの重要時期にある家族
- 親の介護で日本に残る必要がある家族
- 治安や医療環境の問題で家族の帯同が現実的でない地域への赴任
- 赴任期間が短い(2年以内)見込みの場合
単身赴任を成功させるコツ
- ビデオ通話・メッセージで毎日コミュニケーションを取るルーティンを作る
- 年に2回以上の一時帰国(または家族の現地訪問)を計画的に予定する
- 家族の重要イベント(誕生日、運動会、卒業式など)を事前にカレンダー化
- 赴任者・残された家族の双方がメンタルヘルスのサインに敏感になる
- 一時帰国費用の規程・予算を会社と事前に確認
| 「子どもの成長を見られない」喪失感への向き合い方 単身赴任で最も多く語られる悩みが「子どもの成長を見られない」ことです。 完全には埋められない喪失感がある一方で、近年は次のような工夫をする家族が増えています。 ・週1回の家族会議をビデオ通話で固定化(子どもにも発言の時間を設ける) ・子どもとの個別の趣味(オンラインゲーム、ボードゲームアプリなど)を共有する ・現地で買った絵本やお土産を送るなど、物理的なつながりを保つ ・帰国時には「特別なことをする」のではなく、日常を一緒に過ごすことを優先する |
【選択肢3】帯同+キャリア継続:現代の新しい選択肢
近年、コロナ禍を経たリモートワークの普及により、「配偶者の海外赴任に帯同しながら、自身のキャリアも継続する」という第3の選択肢が、現実的な選択肢として広がっています。
具体的な3つのパターン
パターン①:日本の勤務先でリモート就労を継続
現在の勤務先がリモートワークを許容している場合、海外からそのまま勤務を続けることが可能です。ただし、就労ビザ、税務、社会保険の取り扱いに重大な論点があり、勤務先の人事部門と十分な調整が必要です。
| リモート就労継続の論点 【就労ビザ】帯同ビザでは現地での就労が認められない国が多い。海外からのリモートワークは「現地で就労していない」と整理されるが、国ごとの解釈が異なる。 【税務】居住者・非居住者の判定、現地での税務申告義務、源泉徴収の取り扱いが複雑になる。 【社会保険】日本の社会保険は雇用関係維持で継続可能だが、現地での社会保険加入の必要性は国による。 【労務管理】労働時間、休日、時差勤務などの取り扱いを就業規則と整合させる必要がある。 |
パターン②:EORを活用したリモート就労継続
勤務先がリモートワークを許容するが、海外からの直接雇用は法務リスクで難しいというケース。この場合、現地の海外雇用代行(EOR:Employer of Record)が雇用主となり、配偶者を合法的に雇用する仕組みを利用できます。
業務指示と人事評価は日本の勤務先が継続して行いますが、雇用契約・給与支払い・税務・社会保険はEORが担います。これにより、配偶者は現地で合法的に働きながら、日本のキャリアを継続できます。
パターン③:フリーランス・業務委託として独立
現在の勤務先を退職し、フリーランス・業務委託として日本の企業から仕事を請け負う形に切り替えるパターン。場所を選ばない働き方ができますが、収入の安定性、社会保険、福利厚生は自己責任となります。
キャリア継続のメリット
- 帯同のメリット(家族で過ごす時間)と就労のメリット(キャリア継続・経済的自立)の両立
- 帰国後の再就職コストがゼロまたは大幅軽減
- 配偶者の自己肯定感・社会との接続が維持される
- 夫婦間の経済的バランスが保たれる
キャリア継続のハードル
- 時差により業務時間が日本基準(早朝・深夜)にずれる可能性
- 現地での就労許可・税務上の整理が複雑
- 勤務先の理解と制度整備が必要
- 孤独感・チームから切り離された感覚との戦い
| 勤務先との交渉のポイント 配偶者の海外赴任に伴うリモートワーク継続を勤務先に相談する際、次の論点を整理して臨むと話がスムーズです。 ・赴任先の国と滞在期間 ・現地での就労ビザの状況 ・希望する勤務形態(フルリモート/一部出社/フリーランス) ・税務、社会保険の取り扱い案 ・現地でのトラブル時の対応案 ・勤務先側のリスクを最小化する具体策(例:EOR活用の提案) 「お願いベース」ではなく「リスクを整理した提案」として持ち込むと、勤務先側も検討しやすくなります。 |
【特集】子どもの教育・進学への影響
配偶者の選択を考える上で、子どもの教育は最重要な要素の一つです。子どもの年齢・学齢ごとに、考慮すべきポイントが異なります。
未就学児(0〜6歳)
言語習得の柔軟性が高く、現地校・インターナショナルスクールへの順応も容易です。家族帯同に最も向く年齢層。一方で、日本の幼児教育・就学準備期を逃すことになるため、帰国後の小学校入学時に多少の調整が必要になります。
小学生(6〜12歳)
学齢期の教育を海外で受けることの影響は大きいです。日本人学校、現地校、インターナショナルスクールの選択が必要。日本人学校なら帰国後の学習継続がスムーズですが、グローバル教育という観点ではインターを選ぶ家庭も増えています。
中学生(12〜15歳)
受験との関係で家族で意思決定が分かれやすい時期。中学受験を目指す家族は単身赴任を選ぶケースが多く、グローバル教育を志向する家族は帯同を選ぶ傾向があります。
高校生(15〜18歳)
大学受験との関係で、原則として帯同が難しい時期。子どもを日本に残して単身赴任、または子どもがインターナショナル校から海外大学を目指すという選択になります。
【特集】親の介護への影響
近年、配偶者の海外赴任の意思決定で大きな要素になっているのが「親の介護」です。日本に高齢の親がいる場合、帯同して長期間離れることへの不安、罪悪感、現実的な制約があります。
検討すべきポイント
- 親の現在の健康状態と要介護リスクの予測
- 兄弟姉妹との介護分担の協議
- 緊急時に帰国できる体制(一時帰国予算、ビザ)
- 介護サービス・施設の利用
- 親の意向(「海外に行ってきなさい」というスタンスか、「いてほしい」というスタンスか)
親の介護を理由に単身赴任を選ぶ家族は多いですが、近年は「親の意向を尊重して帯同する」「兄弟姉妹で分担して帯同する」「緊急時の帰国体制を整えて帯同する」という選択をする家族も増えています。
【人事担当者向け】配偶者帯同社員のリテンション
配偶者帯同社員のリテンション(離職防止)は、人事担当者にとって重要な課題になりつつあります。理由はシンプル:「配偶者のキャリアが続けられない」ことが、海外赴任を断る・退職する主要因の一つだからです。
企業が取り組める3つの対策
対策1:配偶者のキャリア継続支援制度
配偶者帯同に伴うリモートワーク継続、社内の他部署への異動、人材紹介サービスの提供、語学レッスン補助などの支援メニューを整備します。
対策2:自社社員の配偶者帯同にEORを活用
自社の社員(赴任者ではなく、その配偶者)が他社の社員でリモート就労を継続したい場合、EORの活用を提案するという発想もあります。これは社員本人のリテンションには直接効きませんが、社員の家族満足度を高め、結果的に赴任受諾率と継続率を上げます。
対策3:単身赴任手当・帰国費用の手厚い設計
帯同が困難な家族向けに、単身赴任手当の充実、年複数回の家族の現地訪問費用負担、配偶者の現地一時滞在費用などの手厚い支援を用意します。
| EORの新しい使い方:配偶者帯同支援 「配偶者が日本の会社に勤めていて、海外への帯同を機に退職せざるを得ない」という従来の構図は、EORの活用で大きく変わりつつあります。 日本の勤務先がEORプロバイダーと契約し、配偶者を現地でEORを通じて雇用継続するスキームにより、 ・配偶者は現地で合法的に就労できる ・日本の勤務先のキャリアを中断せずに済む ・税務・社会保険のリスクを勤務先が負わずに済む という三方良しの解決策が実現できます。 GoGlobalでは、こうした「家族の働き方を継続するためのEOR活用」のご相談も承っています。 |
まとめ:「家族の正解」を一緒に探すために
配偶者の海外赴任にどう向き合うかは、家族の数だけ正解があります。「帯同が当たり前」「単身赴任が一般的」という時代から、「家族ごとに最適な形を選ぶ」時代へと変わってきています。リモートワークやEORといった新しい選択肢の登場により、これまで「諦めるしかなかった」キャリア継続も、現実的な選択肢になりつつあります。
本ブログの整理を、家族会議のたたき台としてご活用ください。そして、勤務先の人事担当者の方は、社員と配偶者の双方の人生を尊重した制度設計を進めていただければと思います。海外赴任を「家族みんなにとってのチャンス」にできるかどうかは、企業側の柔軟性にもかかっています。
| GoGlobalがサポートできること GoGlobalは、80カ国以上で展開するEOR(Employer of Record)およびBCS(Business & Corporate Service)のグローバルプロバイダーです。 ・配偶者の海外赴任帯同に伴うリモート就労継続を実現したい ・自社社員の配偶者帯同支援としてEORを活用したい ・配偶者帯同に伴う社員リテンション施策を整備したい ・複数国に展開する駐在員家族のキャリアサポート体制を構築したい こうしたお悩みに、グローバルモビリティの専門チームが日本語でご相談を承ります。お気軽にお問い合わせください。 |
連載:はじめての海外赴任ガイド
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