海外赴任の住居・引越し完全ガイド 持ち家・賃貸の処分から荷物輸送まで【2026年版】

はじめに:住居と引越しは「最初に決めるべき重要事項」
海外赴任の準備項目の中で、住居と引越しは「最も時間がかかり、最も後戻りしにくい」領域です。賃貸の解約予告は1〜2ヶ月前、持ち家の処分方針は3ヶ月以上前から検討、船便荷物の発送は到着の2ヶ月以上前、こうした期限を守るには、辞令が出たらすぐに動き始める必要があります。
また、判断を誤ると経済的な損失も大きくなります。持ち家を空き家にして家賃収入のチャンスを失う、不要な家具を高い船便で運んでしまう、現地でグレードに合わない住居を契約してしまう――これらはいずれも年間数十〜数百万円規模の影響を及ぼします。
本ブログでは、日本側の住居処分から現地住居の手配、海外引越しの実務までを、判断基準とともに整理します。
【日本側】住居の処分方針を決める
日本での住居をどうするかは、「持ち家か賃貸か」「赴任期間の長さ」「家族帯同か単身か」によって最適解が変わります。
賃貸の場合:シンプルだが期限管理が肝心
賃貸物件に住んでいる場合、選択肢は基本的に「解約」一択です。解約予告期間(多くは1〜2ヶ月前)に注意しましょう。
賃貸解約の実務ポイント:
- 解約予告書面の提出(電話だけでは無効な物件が多い)
- 退去立会いの日程調整
- 敷金の精算(原状回復費用との相殺)
- 光熱費・通信費・町内会費の精算
- 郵便物の転送届
- 退去時の鍵の返却方法
持ち家の場合:3つの選択肢
持ち家の場合、「売却」「賃貸に出す」「空き家として残す」という3つの選択肢があります。それぞれメリット・デメリットを整理しましょう。
| 選択肢 | メリット | デメリット | 向くケース |
| (1) 売却 | 資金化できる/管理不要 | 帰国後の住居探しが必要/市況リスク | 帰国時に同じ場所に戻る予定がない |
| (2) 賃貸に出す | 家賃収入で住宅ローン補填/資産維持 | 管理の手間/確定申告必要/賃借人トラブルリスク | 赴任期間が3年以上で帰国後に住み戻る |
| (3) 空き家 | 帰国後すぐに住める/自由度が高い | 固定費が継続/劣化リスク | 赴任期間が短い(1〜2年以内) |
選択肢(1) :売却
赴任期間が長期にわたる、または帰国後に同じ場所に戻る予定がない場合、売却を選ぶケースが多いです。売却完了までに3〜6ヶ月かかることが一般的なので、辞令が出たらすぐに不動産会社への相談を始めましょう。
| 売却で押さえておきたいポイント ・複数の不動産会社に査定を依頼(一括査定サイトの活用も有効) ・住宅ローン残債と売却価格の差額を確認(オーバーローンの場合は注意) ・売却益が出た場合の譲渡所得税(居住用財産の3,000万円控除の適用可否を確認) ・売却タイミングと出国タイミングの調整(決済時に立会いが必要) |
選択肢(2) :賃貸に出す(定期借家契約)
赴任期間が3年以上で、帰国後に住み戻る予定がある場合、賃貸に出すのが経済合理性の高い選択です。家賃収入で住宅ローンを補填しつつ、資産価値を維持できます。
ただし、通常の賃貸契約ではなく「定期借家契約」を選ぶことが鉄則です。定期借家契約は契約期間満了で確実に明け渡しが受けられるため、帰国時のトラブルを防げます。
賃貸に出す場合の実務ポイント:
- 管理会社の選定(駐在員向け管理に強い会社が望ましい)
- 定期借家契約の期間設定(赴任期間に合わせる)
- 賃料設定(近隣相場のリサーチ)
- 家賃収入の確定申告(納税管理人の選定)
- 家賃収入の源泉徴収(賃借人または管理会社が20.42%を源泉徴収)
- 家具・家電の取り扱い(家具付き/家具なし)
- 住宅ローン控除の適用停止の手続き
選択肢(3) :空き家として残す
赴任期間が短い(1〜2年程度)、または家族の事情で帰国後すぐに住み戻る必要がある場合、空き家として残す選択も合理的です。
| 空き家管理の実務上の注意 ・固定資産税、火災保険、住宅ローンの継続支払い ・空き家の定期点検(カビ、害虫、漏水、通気) ・郵便物の転送または管理 ・防犯対策(センサーライト、見回りサービス) ・親族や知人への管理依頼、または専門の空き家管理サービスとの契約 管理を怠ると、帰国時に予想外の修繕費がかかるケースが多発しています。 |
【現地側】赴任先での住居選び
住居の手配方法:3つのパターン
パターン(1):会社が社宅として契約
会社が現地の不動産会社と直接契約し、社員に貸与する形。会社負担で全額または大部分をカバーし、社員は所得税上のみなし利益として一部を負担するケースが多いです。シンガポール、香港、中国などの主要都市では、このパターンが一般的です。
パターン(2):会社が借上社宅として契約
社員が自分で物件を選び、会社が賃貸契約を結ぶ形。社員の希望が反映されやすく、家族のライフスタイルに合わせやすいメリットがあります。
パターン(3):住宅手当を支給し、社員が自分で契約
会社が住宅手当を支給し、社員自身が契約者となるパターン。自由度は高いですが、現地不動産事情に慣れていない赴任者にはハードルが高いです。
住居選びの判断基準
現地で住居を選ぶ際、次のような基準を総合的に考慮します。
- 通勤時間と交通手段(公共交通機関の利便性、車通勤の可否)
- 治安(駐在員向けのセキュリティが整ったエリアかどうか)
- 子どもの学校までのアクセス(スクールバスの停留所、通学時間)
- 日本食材店、医療機関、日本人会の近さ
- 住宅の設備(家具付きか、エアコン、洗濯機などの有無)
- セキュリティ(24時間警備、コンシェルジュ、入退出管理)
- コミュニティ施設(プール、ジム、子どもの遊び場)
- 駐在員コミュニティの存在(他の日本人駐在員家族が住んでいるか)
| 駐在員に人気のあるエリアの傾向 ・シンガポール:オーチャード、リバーバレー、ホーランドビレッジ周辺 ・上海:古北、長寧区、徐家匯エリア ・バンコク:プロンポン、トンロー、エカマイエリア ・ジャカルタ:クマン、ポンドックインダ周辺 ・ロンドン:セントジョンズウッド、ハムステッド、フィンチリー周辺 ・ニューヨーク:マンハッタンのアッパーイーストサイド、ウェストチェスター これらは家賃が高めですが、駐在員コミュニティとインフラが整っており、生活立ち上げがスムーズです。 |
内見・契約時のチェックポイント
- 水回りの状態(カビ、水漏れ、水圧)
- エアコン・暖房の動作確認
- インターネット環境(光回線の引込み可否、速度)
- 家電(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ)の動作確認
- 家具の状態(家具付き物件の場合)
- 窓・ドアの施錠状態
- 近隣の騒音(朝・昼・夜で異なる時間帯に確認できればベスト)
- 契約書の言語(英語版または日本語版の用意有無)
- 契約条件(敷金、解約予告期間、原状回復義務、ペット可否)
【引越し実務】海外引越しの基本
船便・航空便・現地調達の使い分け
| 輸送方法 | 所要期間 | コスト | 適した荷物 |
| 船便 | 2〜3ヶ月 | 最安 | 家具、季節衣類、本、食器 |
| 航空便 | 1〜2週間 | 高い | 当面必要な衣類、生活用品、書類 |
| 手荷物 | 到着即日 | 航空券に含む | 貴重品、現地到着後すぐ必要な物 |
| 現地調達 | 到着後 | 国によって異なる | 大型家具、家電、季節用品 |
船便・航空便のスケジュール感
船便は荷物が現地に到着するまで2〜3ヶ月かかります。出国の2〜3ヶ月前には荷造りを始め、業者に引き渡す必要があります。航空便は1〜2週間で到着するため、出国の2〜3週間前の発送で間に合います。
| 船便と航空便の組み合わせ例 ・船便:家具、食器、季節外衣類、本、思い出の品 ・航空便:当面必要な衣類、洗面用品、調理器具、子どもの教科書・学用品 ・手荷物:パスポート、ビザ、医薬品、現金、貴重品、ノートPC、当日着替え 船便が到着するまでの1〜2ヶ月は航空便と現地調達で凌ぐ、というのが標準パターンです。 |
海外引越し業者の選び方
海外引越しは、国内引越しとは異なる専門性が求められます。次のような観点で業者を選びましょう。
- 海外引越しの実績(赴任先国での取扱実績の有無)
- 見積もりの透明性(追加料金が発生する条件の明示)
- 保険の付保(破損・紛失時の補償範囲と上限)
- 通関手続きのサポート(現地での通関書類の作成代行)
- 現地パートナーの質(現地での配送、開梱、設置)
- 梱包資材の質
- コンプライアンス(持込禁止物の事前チェック)
最低3社から見積もりを取り、サービス内容と価格のバランスで判断しましょう。
通関書類とインボイス
海外引越しでは、通関のためにインボイス(内容物リスト)を提出する必要があります。段ボールごとに何が入っているか、おおよその金額はいくらかを記録します。これを怠ると、現地での通関で時間がかかったり、追加課税されたりするリスクがあります。
| 通関で問題になりやすい持込み物 ・新品の家電(私物として扱われない可能性) ・大量の薬・サプリメント(医療品として規制対象) ・お酒・タバコ(個人輸入制限) ・食品(多くの国で農産物・肉製品・乳製品は持込制限) ・植物・種子(検疫対象) ・武器類(モデルガン、刀剣、爪切りタイプの大型ナイフなど) ・著作権物の大量持込み(CDやDVD) ・銃刀法・薬機法に類する各国の独自規制 事前に大使館・領事館のウェブサイトで確認しておきましょう。 |
【実践】荷物の仕分けと処分のコツ
「持っていく/処分する/実家保管」の3分類
海外引越しの荷物量は、国内引越しとは比較にならないほど絞り込む必要があります。船便コストを考えると、「とりあえず持っていく」は禁物。次の3つに仕分けます。
持っていくべきもの
- 日常的に使う衣類、寝具、調理器具
- 子どもの学用品、教科書、思い出の品
- 日本でしか手に入りにくい物(和食器、漆器、特定の調味料、和書)
- 変圧器を介して使える小型電化製品(電圧確認必須)
- 常備薬(処方箋の英訳とともに)
処分するべきもの
- 大型家具(船便コストが新規購入を上回ることが多い)
- 大型家電(電圧・規格の違いで使えない可能性)
- 古い衣類、5年以上着ていない服
- 読み終わった本、雑誌
- 壊れかけのもの、消耗品
実家・トランクルームで保管するもの
- 帰国後すぐに使う家具・家電(赴任期間が短い場合)
- 思い出の品、写真、アルバム
- 将来必要になる書類(学位記、契約書原本、戸籍関連)
- ピアノ、楽器(運送コストが極めて高い)
処分の手段
- リサイクルショップ、フリマアプリ(メルカリ、ジモティーなど)
- 家具・家電量販店の引き取りサービス
- 不用品回収業者(一括処分)
- 親族・友人への譲渡
- 自治体の粗大ごみ回収
時間の余裕を持って処分する
「出国直前に処分すれば良い」と考えると、ほぼ確実に失敗します。フリマアプリでの売却は思った以上に時間がかかり、買取業者は出張査定の予約が取りにくい時期もあります。最低でも出国の1ヶ月前には処分を完了させる計画で動きましょう。
【特集】電化製品の扱い方
電圧・周波数の確認
国によって電圧(100V、110V、120V、220V、230Vなど)と周波数(50Hz、60Hz)が異なります。日本の100V専用家電を220Vの国で使うと故障しますし、電子レンジなど周波数で動作が変わる家電もあります。
変圧器の限界
変圧器(トランス)を使えば日本の家電を海外でも使えますが、消費電力が大きい家電(電子レンジ、ヘアドライヤー、炊飯器など)には大容量の変圧器が必要で、サイズも大きく、現実的ではありません。
| 家電の判断基準 ・小型・低消費電力の家電(PCの充電器、スマホ充電器、シェーバーなど):変換プラグだけで使えるケースが多い(最近の機器は100V〜240V対応が標準) ・中型・中消費電力(PC本体、テレビ、扇風機など):海外対応モデルなら使える、または現地調達 ・大型・高消費電力(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジなど):現地調達が原則 ・特殊製品(炊飯器、ヘアアイロンなど):100V専用が多いため変圧器か現地調達 新品で長く使う予定の家電であれば、海外対応モデル(マルチボルテージ対応)を出国前に買い替えるのも選択肢です。 |
【帰任時】逆方向の引越しでも同じ判断軸が必要
帰任時は、現地で蓄えた家具・生活用品をどうするかという逆方向の判断が必要になります。
現地で処分すべきもの
- 現地で購入した家具・家電(電圧・規格が異なる)
- 現地でしか使えない設備(特定の電化製品)
- 食料・調味料(持込制限)
- 使わなくなった衣類(特に現地の気候に特化したもの)
日本に持ち帰るもの
- 子どもの学用品・成長記録
- 現地での思い出の品(写真、お土産、絵画など)
- 貴重品、貴金属
- 日本で買えない現地の名品
帰任時の引越し業者選びも、赴任時と同様の基準で。多くの場合、赴任時と同じ業者の現地パートナーに依頼するのがスムーズです。
【視点を変えて】「赴任しない選択」の住居問題
ここまで赴任に伴う住居・引越しの実務を解説してきましたが、最後に視点を変えてみましょう。
| 「駐在員を送らない」という選択肢 そもそも日本から人を送らずに、現地で人材を雇用する選択肢もあります。 ・EOR(Employer of Record)を使えば、現地法人を持たずに合法的に現地スタッフを雇用可能 ・住居問題、引越し問題、家族帯同問題のすべてが発生しない ・現地スタッフは現地の住居事情に精通しているため、サポートも不要 ・撤退時も住居処分などの手続きが発生しない GoGlobalは、80カ国以上で現地法令に準拠したEORサービスを提供し、駐在員を送らない海外展開をサポートしています。 |
まとめ:住居と引越しは「3ヶ月前から動き始める」
海外赴任の住居と引越しは、判断項目が多く、それぞれに期限があります。本ブログのフレームワークを参考に、「日本側の住居処分」「現地住居の手配」「荷物の仕分けと引越し」を並行で進めてください。
辞令が出てからの3ヶ月は、想像以上に短く感じるはずです。早めの行動と専門家(不動産業者、引越し業者、税理士)への相談で、ストレスとコストを最小化しましょう。
| GoGlobalがサポートできること GoGlobalは、80カ国以上で展開する海外雇用代行(EOR:Employer of Record)および海外BPOサービス(BCS:Business & Corporate Service)のグローバルプロバイダーです。 ・駐在員を送らずに、現地で人材を直接雇用したい ・現地法人を設立せずに、海外でのオペレーションを始めたい ・赴任に伴う複雑な手続き・コストを最小化する選択肢を検討したい ・複数国に展開する人材の管理を一元化したい こうしたお悩みに、グローバルモビリティの専門チームが日本語でご相談を承ります。お気軽にお問い合わせください。 |
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